第28話

「失礼いたします。こちら陸王様スペシャルクッキーです。」

「…は?」

テーブルに置かれた皿には赤いジャムクッキーが並んでいる。

ぎょっとする陸王の反応に、花はくすくす笑う。

「陸王様の浅舞の時にお出しした、赤いジャムクッキーが評判で、浅舞の伝統菓子になったんです。」

「……ああ…そうなのか。うん。ありがとう。」

一体何に対しての「ありがとう」なのか、わからないまま礼を言う陸王。


「俺の黄色いジャムクッキーは樹スペシャルか?!」

「んな訳ないでしょ。知名度の差よ。」

樹の発言を一蹴する晴子。

「陸王の名前がお菓子につくなんて、笑いますね士竜~。」

面白がる飛竜の前に、黒縁眼鏡をかけ、髪を後ろで一本に結わえた女生徒が立つ。

「失礼いたします!こちら、飛竜と士竜の義兄弟羊羹です!」


ー義兄弟羊羹?ー


目を丸くする飛竜と士竜。

テーブルに置かれた皿には、つぶ餡と抹茶の二層になった羊羹が載っている。

花はそっと玉露のお茶を置く。

「以前、飛竜様と士竜様が美味しそうに召し上がっていらしたので、つぶ餡と抹茶を一つにしてみました。」

「お名前をお借りしてもよろしいでしょうか!!」

黒縁眼鏡の女生徒が、身を乗り出して叫ぶ剣幕に、たじろぐ飛竜と士竜。

「…ええ…いいですよ。」

「…。」無言の士竜。

陸王様スペシャルクッキーを受け入れた上司の手前、断ることなど出来る筈がない。

「よかったねー。一子いちこちゃん。」

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