第27話

来るなとばかりに、掌を前にかざして制止を促す利江。

その行動にピタリと止まった信悟は、真剣な眼差しを見せた。

「赤尾利江!お前に惚れた!!結婚を前提に付き合ってくれ!!」


キャー!


一瞬の間を置いて、回りにいた女生徒たちが歓声を上げる。

目を点にして固まる利江。

父兄の席では財務部室長の赤尾と、王宮警備室長の田沢が唖然としている。


「何を言っているのよ!あんたと付き合えるわけないでしょー!!」

その光景に笑いを隠せないでいる飛竜。

「ブッ~ククククッ!これは面白くなってきましたねぇー!」

「やめろ飛竜。」

「…。」無言の陸王。


「浅舞で告白されるの初めて見たーっ。」

「利江ちゃんすごーい。」

わーっ。と目をキラキラさせる晴子と花。


「…ー先輩……先輩……花先輩!」

不意に背後から、小声で必死に呼び掛けてくる女生徒の声が聞こえてくる。

「ん?」

晴子と花が振り向くと、そこには振る舞い菓子を出すタイミングを完全に逸した、初等科の女生徒達が助けを求めて立ちすくんでいた。

「!!」

「だっ大丈夫よ!手伝うね!」

「はい!」

花の言葉にホッとした女生徒達は、リハーサル通りにお菓子とお茶を運び始めた。

「あの~花先輩。」

「何?」

来賓席を担当している初等科の女生徒が、トレーにお菓子とお茶を並べている花に話しかける。

「陸王様達の所に、一緒に運んでくれませんか。」

緊張しているのか表情が固い。

「あっ…そうか。わかったわ。」

何かを察した花はトレーを持ち、陸王の元へ運んでいく。

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