第24話

「国王様もいらっしゃるのに…ちょっと心配だな。」

花はふーっとため息をつく。そして、来賓席に目を向けると、陸王の顔がこちらを向いていた。

「!」

慌てて舞台裏に隠れる花。

「ん?どうした花。」

「ううん。何でもないよ晴ちゃん。」


びっくりした。目が合った?気のせいよね。



ドンドンドンドン

大きな太鼓の音と共に演舞者が舞台に整列する。

「始まりましたね。」

飛竜が呟く。


大きな椿の花をあしらった笠を被った女たちが、深々とお辞儀をする。

上体を起こしながら歌舞いが始まった。


陸王には、それが花だとすぐにわかった。


紅をつけた口元には笑みを湛え、薄く開いた瞳にかかる長い睫毛が、女の色香を漂わせる。空を舞う指先が、線を描くように優美に踊る。

「陸王。誰を見ていますか?」

一点を見つめる陸王の耳元で、飛竜が囁く。

「…。」

士竜と目を合わせ、肩をすくめてみせる飛竜。

「はーっ!」ドンッ

「やぁっ!」ドンッ

突然、男たちの掛け声と太鼓の音が響き渡った。

剣舞が始まる。

「え?歌舞いの途中から剣舞が始まるんですか?」

「変わった演出だな。」

その音を合図に、歌舞を舞う女たちが片膝を立てその場に座った。

舞台の中央にいた一人の女生徒だけが立ったまま歌い、剣を持つ仕草で男たちと同じ剣舞を舞い始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る