第23話

国事に影響する仲の悪さとは一体…。


犬猿の仲の二人には、浅舞に参加しないという選択肢がなかったようだ。



この日、浅舞の来賓に陸王が出席することは、たちまち王宮内に広がり、女生徒達の知るところとなっていた。

成人の儀をそっちのけで、女生徒達の心は浮き立つ。

舞台の袖から、浅舞の衣装に着替えた女生徒達が、陸王の姿を見つめていた。


「うわぁ~素敵。かっこいい~!」

「まだ、ご結婚されてないんでしょ?」

「見初められたらどうしよう~!!」


そんな同級生の姿を横目に、晴子と花も例にもれず袖に立っていた。


「あーあ。今年の仕官学校の男子は気の毒だね。陸王様で霞んじゃうもの。」

「前にお会いした時よりかっこよくなってる。」

「…。」

他の女生徒の如く、ときめいている花に呆れる晴子。

「さぁーみてなさいっ!田沢信悟たざわしんご!」

ここに一人、気合いの入っている女生徒がいた。

財務部室長の娘 赤尾利江あかおりえだ。

花はその姿を確認すると、恐る恐る話しかけた。

「利江ちゃん。…本当にするの?私たちは構わないけど…大丈夫?」

「大丈夫よ。あいつより私の方が上手いってことを、見せつけてやらないとね。」

フフフッ。

利江は不敵な笑みを浮かべると、肩回りのストレッチを始めた。

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