第22話

ドンドンドンドン

太鼓の音が響き渡り、浅舞の会場に来賓、父兄が招かれる。


「いやーっ。悪いな陸王!恩に着るぜ!」

樹は士竜、飛竜と共に、陸王の後ろを歩いていた。

「樹。陸王に恥をかかせないように、キチンとしてなさいよ。」

「はっ!承知しております。飛竜様!」


陸王は上下黒の隊服に、背中に赤い龍の刺繍の入った、黒い羽織を着ている。

赤い龍は、第一部隊隊長の証である。


刀を腰から外し来賓席につく。

目の前には二年前に演舞した、半円状の舞台が向い合わせに設置されていた。


「今年の舞台は、間が随分と離れているな。」

陸王の後ろに立ち、会場を見渡す士竜。

「陸王の時とは倍近く離れていますね。これでは、お互いの顔が見えないのでは?」

何気に舞手の名簿を見ていた飛竜には、その理由がわかった。

「あー。わかりましたよ士竜。」

「ん?」

「財務部室長 赤尾様のご息女と、王宮警備室長 田沢様のご子息が、浅舞に参加されるからですよ。」

「犬猿の仲だからか。」

「何です?それは。」

「陸王はまだ知らないでしょうね。」

「王宮会議に二人が揃うと、議題が一つも通らない。」

「学生の頃から因縁があるらしいんですよ。」

「もともと性格が合わない。水と油だ。

顔を合わせない為に、あえて文官と武官に分かれたらしい。」

「子供同士も、近づけさせたくないんでしょうね。」

「分かりやすい距離感だなぁ。」

「浅舞にまで口出しするとは。困った人達ですねぇ~。」

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