第20話

7年前、一国との戦で多数の犠牲を出したのは、この口伝毒によるものだった。


陸王が立っているそこは、7年前の戦で父、劉奈地王りゅうなじおうが戦死した場所。母を人質にとられたとはいえ、龍の血を受け継ぐといわれた父は死んだ。

自害した母の骸を晒されても、動じることはなかった筈だ。

劉奈一族の叔父は、妖術使いを皆殺しにしたが、父を庇って戦死。父は一国の王と相討ちになり死んだ。

当時13歳だった陸王は王宮に守られていた。劉奈の血を絶やさぬ為に。


この世に確かなものなどない。

7年前に龍の霊力が揺らいだ。陸王はそう感じている。

龍の霊力や、劉奈一族の血脈ばかり頼っていては、いずれこの国も滅ぶだろう。

父は死んだ。叔父も。

僕もいつ死ぬかわからない。


その昔、龍の子供を身ごもった女がいた。それが劉奈一族の始まりだといわれている。




日も暮れようとする頃、陸王は執務室に戻ってきた。

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