第19話

一国との境界であろうそこに陸王は立っていた。

腰のベルトに刀を差し、藍色の羽織以外は全て黒で統一された隊服を着ている。

体も一回り大きくなり、背は二人の護衛と肩を並べるまでになっていた。

山から吹き下ろす風が陸王をあおる。


龍の霊力で他国の侵略を阻んでいるとはいえ、それが何を指すのか、龍の血を受け継ぐといわれる劉奈一族の陸王でさえもわからない。

ただ、龍が祭られてから長い年月に渡って、他国の侵略がないのは事実だ。7年前の戦でも多数の犠牲があったものの、侵略は免れている。

古生物学者で、龍の研究をしている真正博士によれば、龍塚に祭られている龍が死んだのが、約2000年前。

その遺骸は腐ることもなく、まるで眠っているかのように原形を留めている。

古の支配者に対する畏怖が侵略を阻むのか。


劉奈一族が、龍の血を受け継ぐといわれる所以は、あらゆる毒に耐性があるからだ。

隣国一国の民には、妖術を使う一族がいる。

真正博士はこれを口伝毒こうでんどくといっている。

物を介さずに、言葉に毒をのせて毒殺すること。

それは耳から入るのか、皮膚から入るのか、体のどこから侵入するのかわかっていない。

今のところ、この妖術に対抗できるのは毒に耐性がある陸王だけなのだ。

真正博士は古生物学者でありながら、現在は薬学にも通じ、口伝毒の対抗手段を研究している。

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