第14話

成人の儀を終え、先に会場を後にする国王を見送ると会場にテーブルが運び込まれ、お茶会へと切り替わる。

毎年このお茶会で何組かの縁談がまとまる。


初等科の生徒達に案内され席につく舞手たち。

来賓、父兄、舞手の順にお菓子とお茶を振る舞うのだ。

陸王の二人の護衛も、この日は父兄として参加していた。


「おめでとうございます。お菓子でございます。」

「ありがとう…。」

二人の護衛の前につぶあんの羊羹と抹茶の羊羮が一つずつ載った小さなお皿と、お茶がそれぞれ添えられていた。

「玉露でございます。」

「…じじ臭いですね。何故でしょうか士竜…。私はまだ24ですよ。」

「父兄だからだろ。」

「見た目からいって貴方のせいでは?」

「俺はまだ27だ。」


「ご成人おめでとうございます。お菓子とお茶でございます。」

晴子が樹の前にお菓子とお茶を運んでくる。

「黄色いジャムクッキー、多目に入れといたからね。」

「おっ!サンキュー晴子!」

「陸王様、ご成人おめでとうございます。」

花も陸王の前に赤いジャムクッキーが多く並んだお皿を置く。

「花っお茶は?」

「あっ、いけないっ!」

口元に手をあて踵を返す。ふわっと花の髪が揺れた。その途端に、あの龍塚の草原の匂いが陸王の鼻先に触れる。

「ん…?」

お茶をトレーに載せて急いで戻ってくる花。

「申し訳ありませんでした。お茶でございます。」

微笑みを浮かべ、お茶を置く仕草からもあの匂いが漂う。


君…だったのか…。


「花行くよー。」

「うん。」

次のテーブルへ急ぐ花の残り香が陸王を包む。

「いい匂いだ。」

「ただの紅茶だろ。お前匂いにうるせえのか?」

呆れ顔で陸王を見る樹。

陸王は無意識に呟いていた言葉に、手で口を覆う。

「いや…気にするな。」

「は?何が?」


誰も知らない君の匂い。

どうして僕にだけわかるのだろう。


「この羊羹、なかなかイケますね。士竜。」

「玉露と合うな。」

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