第13話

浅舞が始まる。



ドンッドンッドンッドンッ

澄み渡った秋空の下、会場に力強い太鼓の音が響き渡る。

半円状の舞台に、大きな椿の花をあしらった笠をかぶり、唇に紅を差した赤い着物に白い袴姿の女たちが整列する。

向い合わせの舞台では、剣舞の衣装の上に肩鎧をつけ、銀糸の龍の刺繍が入った深緑色の鉢巻きをした男たちが整列する。

太鼓の音と共に女たちの歌舞が始まる。


それは優美で甘く切ない物語。



~龍を愛する乙女の心は龍の背にのり大地を駆ける

重なる二つの心の先に例え別れがあろうとも

龍を愛する乙女の心は消えることはない

ああ眠れ龍よ乙女の胸で

あなたを失うことはない~


龍を愛する乙女の前で命を絶たれた龍のうた。


女たちの歌舞が終わると男たちの剣舞が始まる。

太鼓の音に合わせて掛け声をあげながら、勇猛で荒々しく大地を踏みしめ、時に繊細に一糸乱れず刀を振るう。


剣舞 龍舞


舞いが終わると会場から惜しみ無い拍手が送られた。



「よし!準備に入るわよ!」

「はい!!」

舞台裏ではマリ先生の号令で、初等科の生徒達が振る舞い菓子の準備に取りかかる。

毎年、舞手と来賓、父兄にお菓子とお茶を振る舞うのだ。

これはその年に入学した初等科の生徒の役目であり、中等科の生徒達は来年の浅舞の為に観客席からの見学になる。

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