第11話

キャーッ!!


突然、悲鳴にも似た歓声が上がる。

樹に続いて陸王が教室に入ってきたのだ。

晴子は、その歓声に気圧されている樹の肩にポンと手を乗せた。

「比べちゃ駄目よ。あっちは別格だから。」

「…はい。」


カーテンを揺らし、窓から吹き抜けていく風が陸王の鼻先をかすめる。

また、あの匂いがする。

龍塚の草原の匂い。


龍塚は一国いちこくとの国境付近にある。その匂いがここまで風に運ばれてくるとは考えにくい。この教室から匂いがするのか?

ふと、横をみると樹の側に二人の少女が立っている。

髪を一つにまとめ、おだんごに結んでいる少し太めの女の子と、髪を顎のところで切り揃えている小柄で細身の女の子だ。


この子達が樹の妹分か。

どちらが真正博士のご息女なんだろう。


陸王は、大勢の少女達に囲まれているにも関わらず、そんな事に思いを巡らせていた。

「晴ちゃん、花ちゃーん。ちょっと手伝って。」

「はーい。」

二人は教室の隅で、お菓子の準備をしていたマリ先生の元に戻っていった。

その様子を見ていた美麗がそっと陸王の側に歩み寄る。

「陸王様。マリ先生が浅舞の振る舞い菓子の試食を、陸王様達にお願いしたいそうです。」

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