第8話

樹は挨拶を交わす陸王の後ろで、中庭を取り囲むように立つ校舎を見回していた。

窓から顔を出している女生徒達の顔を順番に確認していく。

そんな樹を不思議に思ったのか、美麗が樹に声を掛けてきた。

「どうされました?樹様。」

「あ、…実は知り合いが初等科いるんです。」

「まあ。それでは浅舞の会場をご案内した後に、初等科に行ってみましょうか。」

「宜しいのですか?」

「ええ。校内もご案内しますね。」

「有難うございます。」


浅舞の会場は校庭の中央に造られていた。

半円状の大きな舞台が5メートル程の間をあけて向かい合わせになっている。

客席から見て右が女性、左が男性。

野外で行われるのだ。

仕官学校の生徒達が舞台に上がる。

「意外と大きいな。しかし、男10人で剣舞をするとなればギリギリか。」

「間違って下に落ちたら笑い者だな。」

それは俺の役目かと自嘲する樹。

舞台は地上から約1メートルの高さになっている。


舞台の確認をしている生徒達を、少し離れた場所から眺めている二人の護衛には、もう一つの目的があった。

それは陸王の嫁選びである。

「今年の女生徒達は18名。」

「家柄、容姿、立ち振舞いからみても美麗が1番でしょう。」

「そうだな。星山大臣のご息女ならば釣り合いもとれる。」

「まあ、陸王はいい男ですからね。結婚を申し込めば一発でしょう。」

飛竜は打ち合わせをしている陸王の隣に並ぶと、陸王の肩に手を乗せた。

「なんですか?」

そのまま肩を引き寄せると耳元で囁く。

「私達は中庭に移動します。美麗殿に校内を案内してもらって下さいね。」

「じゃあな。」

「…。」

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