第5話

「しかし、女学院は良いですねー。なんて清々しい香りなんでしょう。心が洗われるようです。

仕官学校の、あのむさ苦しい臭いとは大違いですねー士竜。」

「全くだな。」

会話の主に視線を投げ掛ける陸王。

「ここまで付いてくる必要はないと思いますが。飛竜兄、士竜兄。」

「何を言う!俺達はお前の護衛だからな。」

「そうですよ。あなたに何かあったらどうするんですか!」

至極当然のように言い返す二人。

ー単に女学院に入りたかっただけだろう?ー

という言葉をその場全員が飲み込んだ。


腰に差した刀の柄に片腕をのせ、上下共に黒い隊服に身を包み、藍色の羽織を着ているこの二人の護衛は、五年前の隣国、一国いちこくとの戦で両親を失い、親類もことごとく戦死。

陸王が天涯孤独となったその日から付いている。

劉奈一族に脈脈と受け継がれてきた龍の血を守るためだ。


総勢12名の一行が、中庭に差し掛かった時だった。

女学院の校舎から黄色い歓声が響き渡った。中庭に面した窓という窓から、身を乗り出す女生徒たち。

「キャーッいらしたわー!」

「樹様かっこいい!」

「まって。あれは陸王様じゃない?!!ああ素敵っかっこいいー!!」

「護衛の方もいらしてるわよ!飛竜様に士竜様!大人の男性も素敵ねー!!」

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