草原デビル

yas

草原デビル

 最近、草原にただ一匹の悪魔がいる夢を見る。何も語ることなくじっと草原の中を佇む悪魔。そうして僕は目が覚める。


「不思議な夢だ」


 たまに見るくらいなら良いが、この夢は毎日のように見る。このような夢を見始めるということは何かの予兆だろうか?


 僕は森の中にある家に住んでいる三十代の青年。近頃引っ越してきたのだが森の中というのは不便が大きい。自然に囲まれた家というのに憧れてこの家に決めてしまったのだが田舎の方なので色々面倒臭い部分があった。


 しかし、最近慣れてきたのでそこに至っては問題が無くなりつつあったのだが…。


「何か変な夢を見るようになったな。この家に原因があるんだろうか?」


 せっかく引っ越してきたのに、毎日変な夢を見てはしょうがない。まあ草原の中、小さく佇む悪魔の夢を見るというくらいなので放って置いてもいいのだが少し気になってきた。


「あれ?そうだ、そういえばこの近くに占い師がいたんだっけ」


 この田舎に珍しく占いをやっているお店があるのを思い出した。引っ越してきた時に珍しいと思って場所も覚えていた。夢占いでもしてもらおうか。


「さっそく明日行ってみよう」


 僕はすぐに計画を立てると電話で占いの予約を取って明日に備えることにした。そうしてしばらく家で過ごしているとすぐに夜が来た。今日はとりあえず寝るか。


 今日もとりあえずあの夢を見るだろうか?


「おやすみ」


 …出た。またあの草原の中に悪魔がいる夢だ。草原の中を佇んでいる悪魔はツノが生えて人型でコウモリのような羽が生え、三又の槍を持った黒い一般的な悪魔の外見だ。僕はこの夢を「草原デビル」と名付けていた。


 そうしているといつもは目が覚めて終わるのだが、なんと今夜は突然その悪魔が自分に向かって襲いかかってきた。


「なんだ!?」


 取っ組み合いになる僕と悪魔。しばらく組み合っていたが悪魔の力は意外と弱い。普通に勝てそうだ。


「そりゃ!」


 悪魔は草原の中に倒れ伏し、悲しそうな顔をすると消えてしまった。


 そうして僕は夢から覚めた…。もう朝になっていた。


 気分を変えようと外に出ると家の周りにはあたり一面、雑草が多く生えていた。昨日まで雑草は生えていなかったはずだが。まあ自然の中だとこんなものだろうか。僕は雑草を刈るために草刈り機を使って家の周りの草を刈り終わると占い師の元に向かうことにした。


 店の中に入るとおばさんが一人いて、僕が話をすると納得したように話し始めた。


「草原は始まり、つまり人類がまだ文明を作る前の始まりを表しています。悪魔は都会、つまりは文明からきた不浄ということですな。それをあなたは昨夜打ち倒した」


「そのことによっておそらく家の周りに草が生えたのでしょう」


「夢が現実に影響を与えるとは珍しい、あなたは才能があるようだ。いかがですか?ここで働かれては?」


 なぜか仕事を勧められ、引っ越したばかりでまだ仕事先も見つかっていなかった自分はしばらく考えたが占い師の手伝いという選択をするのはちょっと難しかった。おばさんの話もよく分からないし…。


 結局、僕はその日は占いの店を後にしてあの自然豊かな家に帰ることにした。


 家に帰ると雑草は生えていなかった。草刈り機で刈ったことは現実みたいだ。


 家の中に入り用事を済ませているといつの間にか夜になっていた。今日も眠る僕…。しばらくして夢の中に入る。


 すると、草原の中を三体の悪魔がただ佇んでいた…。

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草原デビル yas @yas0223

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