第27話
そうして憎悪を胸の中に育てながら日々過ごす才華。特に最近、憎悪の対象である美織に何かあったのか。以前にも増して周囲に優しく微笑む姿をよく見かけるようになる。その姿は周囲にとって夢中になるほど愛らしいものであったらしい。以前にも増して皆は美織に見惚れるようになる。だが、それは当然才華にとって当然不快にしか感じないのだろう。現に彼女の胸の中には強まった憎悪が更に変化。嫌な存在が消えた世界を望むようになっていた。
そんな想いが通じてしまったのか。才華は『ある物』を手に入れてしまう。裏に雪の結晶の形をした模様が彫られた美しい手鏡を…。
(とても…綺麗だわ。)
触った感覚からその手鏡は年季の入った物である事を何となく察知した。だが、自分の誕生日に誰も祝ってくれなかった事。それに腹が立ち家から飛び出した時に見つけたからか。才華はその手鏡に運命的なものを感じ取ってしまう。そして芽生えた感覚に従うように彼女は手鏡を持ち帰ると、自室にて布に包んで丁寧に保管するのだった。
それから数日が経過した。美織の通う学校は街の方にあるからだろう。教師の数だけではなく生徒の数も多く校内は気配や声で賑やかだ。それは時々うるさいとも感じられるが、大半が楽しそうなものであったからか。美織はそれらの声に耳を傾けながら日々学業等に励んでいた。
そんな変わらない日常が流れていたが、最近少し気になる事があった。それは…。
(…?何か…辛そうな人達がいる?)
大半の生徒達が常と変わらない様子で過ごしていたからだろう。一見すると校内の様子は常と変わらない。だが、そんな中でも他人に気を配る事が多いほどに周囲の変化に敏感であるからか。美織は一部の生徒に元気がなくなっている事に気が付く。それだけではない。『雨燕』達に愛された事で僅かに不思議な力が開花してしまったらしく、彼女は時々見えるようになったのだ。元気がなくなってきた生徒達の体に黒い影のようなものが漂っている姿が…。
(あれは…何…?『若様』達みたいなもの…?ううん…。何となくだけど…『若様』達と違って『良くないもの』な気がする…。)
少し前に起きた『雨燕』の出来事の際に出会った1人の少女…奈瑠と違って、自分は特別な力は持っていない。その事は自覚もしていた。だが、それでも一部の生徒達の様子が明らかにおかしい事。何より様子がおかしい生徒達から黒い影が漂っていた事は見間違いではないという自信があったからだろう。その生徒達の事が美織は気になってしまう。もっとも直感で触れてはいけない事を察知した為に、その生徒達に接触はしなかったのだが…。
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