第28話

更に美織にとって気になる事があった。それは…。

「…?美織?」

「…っ。才華ちゃん。」

「どうかしたの?最近、ずっと考え込んでいるみたいだけど…。」

「えっ、えっと…。」

急に声をかけられ美織は思わず息を呑む。その相手が普段積極的に話しかけてはこない才華だったからだ。それは彼女の事を友人だと思っている美織ですら驚く出来事だったのだろう。上手く返事は出来ず戸惑いの声を漏らすばかりだ。だが、当の才華は機嫌が良いのか。それらの美織の態度にも苛立ちを示してはこない。むしろ鼻歌まで漏らしながら立ち去っていく。そして美織は才華のその姿に益々戸惑うばかりだが、自分1人では何も出来ない事も分かっているからか。胸に芽生えた戸惑いを封じ込めながら、いつものように学生生活を送るのだった。




 そんな日々が更に過ぎて。遂に黒い影を漂わせていた生徒達は体調を崩してしまったらしく、登校しなくなってしまう。それも休校する生徒は日ごとに増し、美織や才華の同級生を中心に2桁の人数になる。更に一度休んでしまった生徒達は体調が戻らないのか。十日以上が経過しても一向に登校してこない。それにより校内は益々寂しくなっていった。


 だが、その状況でも才華の様子は変わらない。むしろ最近は益々機嫌良さげな様子で過ごしていた。彼女だけの宝物を見つけたのだから…。

(今日も家に帰ったら『あれ』を覗いてみよう。とても綺麗で…面白いものが映る手鏡を…。)

先日拾った背面に美しい彫刻が施された手鏡。それは外見が美しい代物なだけでなく、不思議な雰囲気を漂わせている物である事にも気が付いた。そして妙な雰囲気を漂わせる物である事に気が付いたからか。鏡の中に黒いものが映り込んでいるのを才華は見てしまう。それも時の経過と共に映り込んだ黒いものは徐々に変形。人の形に変わっていくのにも気が付いてしまう。それらの状態は明らかに異常で、本来ならば恐怖を抱くだろう。だが、妙なものが映り込んでいても自分が拾った物で美しい彫刻が施された手鏡であるからか。才華は手放そうとはしない。更にはその手鏡を手にしてから自分が不愉快に感じていた者達が次々と登校しなくなった事にも気が付いてしまったからだろう。『自分の願いを叶えてくれる物』として益々手鏡を大切にするのだった。

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