第22話

だが、自分達を包み込む重苦しい空気は壊れる事になる。2人を動揺させ落ち込ませた原因でもある奈瑠の口から、こんな言葉が発せられたのだから…。

「だからこそ…私は決めたの。もっと強くなる事を…。大切な『友達』のあなた達を守る為にね。じゃないと一緒にはいられないから。」

「…っ!」

「傍に…いてくれる、んですか…?」

雰囲気から自分達との別れを改めて奈瑠が告げてくると思っていたからか。2人の胸の中には悲しみが渦巻き続けていた。だからこそ彼女が告げてきた言葉は驚きの内容だったのだろう。現に奈瑠本人の口から出た言葉を聞いた瞬間、2人は目を見開きながら息を呑む。それだけでなく間の抜けた声で聞き返してしまう始末だ。だが、そんな2人の様子にも奈瑠が呆れてしまう事はない。むしろ驚いた様子の2人を見ながら言葉を続けた。

「前なら…離れようとしたと思うわ。実際、少し前に離れようとした事があったでしょう?あの時は本当にあなた達の傍にいて良いのか分からなくて…不安だったから。だから離れようとしたの。だけど…あの時にあなた達は私を自分達の世界に引き寄せてくれた。『友達』だって言葉を口にしながらね。その言葉が温かかったから…私はあなた達の世界に留まる事が出来たの。…今もね。」

「奈瑠、さん…。」

「まぁ…あなた達が嫌なら私は離れるしかないけど…!?」

皆がいる世界を選んだ事を改めて告げてくる奈瑠。その言葉達は2人にとって嬉しい内容だったからか。表情だけでなく場の空気も緩んでいく。そして喜びを示すように優子は抱き付いてくると、奈瑠は戸惑いながらも僅かに微笑むのだった。




 それから更に数日が経過した。奈瑠が自分の『友達』である事を告げ、それに喜びを感じたからか。奈瑠によって最終的に封印されても、その直前に『灯鬼』は自分の術を解いてくれていたからだろう。3人が戻った頃には彼によって『神隠し』をされていた人々は既に帰還。『薬師村』は元の様子を取り戻していた。それに今回の出来事を知る宏太や優子、更に2人の相談に乗っていた事で必然的に事情を知った咲も安心したらしい。皆は密かに安堵を含ませた息を漏らす。だが、表面上は以前の様子を取り戻したが、密かにある変化も起きていた。

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