第19話
だが、やはり奈瑠から理由を聞いても『灯鬼』は納得出来なかった。そればかりか怒りと共に邪気も膨れ上がったらしい。人間の少年のような姿は変化していき、頭に1本の角が生えた鬼のような姿になってしまう。更には前屈みの体勢になると自分の事を真っ直ぐ見つめながら身構え続けている奈瑠に向かって突っ込んでいく。こんな事を叫びながら…。
『俺の『友達』でいてくれないような奴は…消えてしまえ!』
「…っ!」
体に邪気をまといながら勢いよく突っ込んでくる『灯鬼』。その勢いは力をまとっている事で妙に強いものになっているのだろう。普通の人ならば突風に煽られる感覚で吹き飛ばされてしまうほどだ。そして突っ込んでくる強さは妖力を体に宿す奈瑠でも響くほどらしい。それを表すように彼女は吹き飛ばされなかったものの、当たった瞬間に僅かに後退りしてしまうのだった。
それでも『灯鬼』が攻撃を緩めるつもりはないらしい。その証拠にぶつかる事で自分に気を取らせている間に、『灯鬼』は奈瑠の遥か後方に向けて力を流す。そして流した力を使って術を発動。黒い影のようなものから更に無数の手を生むと、奈瑠の後方で様子を伺っていた宏太と優子の2人に狙いを定める。闇から監視し続けていた事で奈瑠の今の『友達』が2人である事。更に大切にしている2人の事を消せば、再び自分と『友達』になれると思ったからだ。それにより自分と対峙させている内に消すべく、『灯鬼』は力を送り術を発動し続ける。宏太と優子に危機が迫っていた。
だが、そんな状況に奈瑠が気付かないはずがない。その証拠に奈瑠は『灯鬼』と対峙しながら密かに自分の妖力を地中から流し込む。そして流し込んだ妖力で狐火を作ると宏太と優子の2人に襲いかかろうとしていた黒い手に向かって放った。
『ギャアアッ…!?』
「…っ!?」
「なっ、何…!?」
奈瑠の方に意識があったとはいえ、自分達の背後で突然気味の悪い声が上がった事。それに気が付き後ろを振り向いた事で、消滅していく黒い影のようなものが目に入ったからだろう。2人は息を呑み、戸惑いを含ませた声も上げてしまう。それでも奈瑠と関わるようになり、『人と異なる存在』の事もよく知るようになったからだろう。自分達が『人と異なる存在』…妖に狙われていた事。そして奈瑠の力で救われた事も分かったのだった。
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