第18話
そんな2人の侵入に既に気付いていたのだろう。奈瑠に話し続ける『灯鬼』は更に彼女に向かって手を差し伸べる。それは明らかに2人に見せつけるものだったらしい。視線を一瞬向けると、不敵な笑みも浮かべていた。
だが…。
「…ええ、仲良くするわ。あなたが皆を隠したりするような者じゃなければ、ね。」
『へぇ…分かっていたんだ。さすがだね。っていうか、いつから気付いていたの?俺なりに上手くやっていたつもりなんだけど。』
自分の所へ誘い込もうと手を伸ばしたが、奈瑠は取ろうとはしてこない。それだけでなく理由まで告げてくる。しかも口調は淡々としていながらも僅かに怒りを漂わせていた事。何より自分の正体を見抜けていた様子に驚いたのだろう。『灯鬼』は思わず声を上げる。すると奈瑠は彼からの問いに答えるつもりらしい。警戒を解こうとはしなかったが、身構えながらも口を開いた。
「確かにあなたは上手かったわ。幼い頃から力があった私を見つけると『友達』として傍にいた。一緒に遊んだりして楽しい時間を作ってくれようとした。おかげで私は『友達』という存在を初めて認識する事が出来たわ。だけどね…。」
『…っ!?』
「今の『友達』を悲しませたり、苦しませるような奴は願い下げよ。許す事は出来ないわ!」
『チッ…!』
自分の正体を知られてしまっても『灯鬼』はまだ少し油断していたのか。人懐こい笑みを奈瑠に向けていた。だが、当の奈瑠は険しい表情で答えるだけでなく、攻撃の意志を宿した狐火を放ってきたからだろう。『灯鬼』は思わず舌打ちをしてしまう。それだけでなく狐火を避けるように素早く動き距離を置くと告げた。
『はっ…!素直にずっと俺の『友達』のままでいれば良いのに!そうすれば人が消える事はなかった!今までも…これからも!ずっと俺とだけが『友達』でいれば良かったのに!』
「あなたの…あなたのその邪気に気が付いたから母と祖母は引き離したのよ。私が他の人達と少しでも距離を縮められるように。あなたに関する記憶を消してまでもね。まぁ…私はそれに全然気が付かなかったし、この考えも想像に近いけど…。」
自分の正体を見抜かれただけでなく拒絶を含ませた言葉を告げられたからか。不満のような感情が爆発したらしく、『灯鬼』は叫び声に近いものを上げる。だが、彼と対峙する奈瑠も当然引こうとはしない。むしろ『灯鬼』と離れる事になった理由を告げながら、彼を監視するように見つめていた。
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