第16話
そうして進んでいった先で奈瑠は出会ったのだ。不思議な雰囲気を漂わせる謎の少年に…。
(…っ!何者?)
『やぁ…。久し振りだね、奈瑠。元気にしてた?』
(…っ!?私の事を…知ってる!?)
明らかに『人と異なる存在』である事を察知したからか。奈瑠は警戒心を強めていく。しかも『人と異なる存在』が自分の事を知っているような態度を見せてくるからだろう。警戒心は強まる一方だ。それにより奈瑠は戦闘にも備えるつもりなのだろう。自分の中に宿る妖力を高めるように体を強張らせ続けた。
だが、高められたはずの妖力がすぐに発動される事はなかった。何故なら自分に話しかけてきた者が姿を現した途端、激しい頭痛に襲われたのだ。それだけでなく断片的ではあるが脳裏に映像が流れ始める。今よりも幼い頃の自分の前に彼が現れた光景が…。
(…っ!やっぱり私は…彼に会った事があるって事…!?)
断片的なものであっても脳裏に流れ込んでくる映像を見ていく内に、妙な感覚…懐かしいという感覚を自覚したからだろう。奈瑠は完全に攻撃の態勢を解いてしまう。そして目の前に現れた彼の方を見つめた。
一方の彼は奈瑠の様子から僅かでも自分との記憶が過っている事に気が付いたらしい。喜びを示すように不敵な笑みを浮かべる。更には奈瑠に記憶を取り戻させようと考えていたのだろう。彼は自分の脳裏に流れてくる断片的な映像に戸惑い、固まってしまった奈瑠に近付いてくる。それだけでなく徐に手を伸ばすと彼女の視界を塞ぐように目に自分の手を押し当てた。
「…っ!?何、を…。」
『何って…。忘れているようだからね。思い出させてあげようと思ったんだ。俺と君のあの楽しかった日々を…ね。』
「っ!?やっ…めて…。」
自分に向かって伸ばされてくる手に初めて恐怖のようなものを感じたのか。奈瑠は戸惑いを含ませた声を上げる。だが、当然彼が動きを止める事はなく、むしろ押し当てた手から力を放ち始めた。
すると彼の手から放った力の影響だろう。奈瑠の脳裏に再び過去の記憶と思われる映像が流れ込んでくる。それも直接、彼の力を受けたからか。少し前に見ていた断片的なものではなく、彼との出会いや別れまでの一連のもの全てだ。そして流れ込んできたものを自然と受け入れていった自分にも気付き、同時に全てが実際に過去に起きていた事であるとも分かったのだろう。奈瑠は吸収するように彼との思い出を全て取り戻していった。
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