第15話
それらの出来事を今の奈瑠の様子を見ながら思い返す『祖母』。だが、その様子は一向に険しいままだった。何故なら周囲の妖達から聞いた事で『祖母』は改めて気付かされたのだ。最近、連続して起きている『神隠し』が自分達で封印した『友達』である事を…。
(恐らく封印術を施してくれたアイツ…奈瑠の『母親』がいなくなったから力が弱まったんじゃ。封印の力がな…。)
最近、色々と起きて僅かに警戒が緩んでしまったからか。元々、『人間』に化ける事が上手い存在でもあったからか。何が理由であっても、気が付くのに時間がかかってしまった事を悔やんでいるのだろう。『祖母』の表情は険しいままだ。だが、悔しい想いは確かに抱いていても、それを解決しようという気力はあまり沸かなかった。一方的で褒められた行動ではなかったが、『神隠し』にあった者達が大切な孫娘に対して冷たくしていた事を知っていたのだから…。
そんな事を『祖母』は思っていたが、当の奈瑠はそれに気が付かない。そればかりか『祖母』に従い宏太達に協力しない事を示していたが、それはあくまで表面上。実際は自分の友人達の沈んだ様子を見て痛みのようなものを感じたからだろう。奈瑠は彼らの為に行動を起こす決意を固める。その証拠に『祖母』が未だ室内にいる事を気配で感知すると静かに、そして素早く自宅から出ていく。悲しげな友人達の姿を思い浮かべながら…。
だが、今回の事は色々と覚悟が必要なものであったらしい。というのも、調べるべく動き回っていた奈瑠は自分の体に不調を感じ始めたのだ。頭痛と倦怠感という不調をだ。更には脳裏に途切れ途切れであるが何やら映像のようなものも流れているのに奈瑠は気が付いた。もっとも流れてくる映像のようなものは途切れ過ぎていて、内容は全く分からなかった。だが…。
(なのに何でだろう…?この感覚…。懐かしい…?)
途切れ途切れの映像が流れ込んでくる度に、奈瑠の中でそんな感覚も芽生えてきたのだろう。彼女は戸惑いを強める。それでも自問自答をいくら繰り返しても、誰も答えてくれるはずがない。結局、奈瑠はその違和感に気付きながらも1人で進み続けるのだった。
そんな状態の時だった。何者かが近付いてくる気配を感じ取ったのは…。
(…っ!?これって…妖…?)
『おいで…。こっちに…おいで…。』
(呼んでる…?)
明らかに『人間』ではない気配だったからか。奈瑠は体を強張らせる。だが、警戒心は強まる一方でも、自分の事を誘うその声は力を宿したものだったのか。奈瑠の足は自然と自分を呼ぶ声の方へと進んでいく。何者かに操られているように何のためらいもない動きで…。
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