第14話
その理由は今から数年前…奈瑠が『神隠し』という現象に立ち向かう少し前の頃にまでさかのぼる。当時の奈瑠は自分が妖狐の父と人間の母との間に生まれた『半妖』という存在である事をようやく自覚し始めた頃だったからだろう。物心がついた頃から妖の存在を見聞きする事が出来ていた。そればかりか『半妖』であるが故に身体的な能力も高かったらしい。その証拠に奈瑠は3歳の頃から誰の手を借りなくても飛び跳ねるようにして木の上に登る事が出来た上、風のように駆け抜けたり水中に潜る事も出来るようになっていた。
だが、奈瑠のその様子は明らかに人外を示すものであったからだろう。彼女の周りには『友達』と呼べる者がいなくなってしまう。それも奈瑠の存在を避けたがっていたのは子供よりも、やはり大人であったらしい。皆は徹底的に彼女から距離を置かせようとする。そして自分達の親でもあったりする周囲の大人達の反応を子供達は観察。奈瑠を避ける事を自然と学んでしまい、彼女の周囲からは益々人が離れていく。結果、彼女の傍には『母親』以外の人間はいなくなり、実質独りでいるようになっていた。
そんな寂しさを感じられる時間を過ごしていた奈瑠だったが、ある時から変化が生まれた。奈瑠に初めて『友達』と呼べる者が出来たのだ。それも相手は奈瑠と同じ年頃のはずの少年だったのだが、他の同世代の子供達とは違って彼女を拒絶しなかった。むしろ積極的に関わろうとしてくる姿が新鮮で、同時に不思議な喜びも抱いたのだろう。奈瑠は拒絶するばかりか少年を受け入れていく。そして少年の方も自分と距離を縮めてくれる奈瑠の姿に喜びを感じていたらしい。その証拠に益々彼女の傍にいるようになった。
だが、奈瑠の事を受け入れるばかりか距離を縮めていく姿に、奈瑠の『母親』は早々に違和感を覚えたのだろう。少年の正体を見極めるべく探りを入れる。そして遂に彼の正体が『人と異なる存在』である事を突き止めたのだ。それも妖狐である奈瑠の『祖母』が一瞬感じ取る事が出来なくなるほどに、『人間』に化ける事が上手い存在。更には『神隠し』を容易に行えるほどに強い邪気を持つ者である事も判明したからだろう。『母親』だけでなく『父親』や『祖母』も警戒心を強める。だが、警戒心を抱くだけでなく皆は決意したのだ。『友達』を封印する事を…。
「けど…それって奈瑠から『友達』を奪う事になるのよね…。正体が何であれ、初めて出来た『友達』を…。」
『なら、どうするんじゃ?いつ本性を表すかも分からん奴を野放しにしておくのか?奈瑠が消されるかもしれないというのに…。』
「そう、ね…。決めないと…。」
『祖母』からの言葉にようやく決意を固める事が出来たらしい。『母親』は『友達』を封印する事を決意する。それだけでなく奈瑠の『友達』に関する記憶も封じる事にしたのだった。
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