第13話

そうして咲も了承した為、奈瑠に話をする事にした優子。早速、未だ現状に戸惑った宏太の手を取ると勢いよく咲の家から出ていく。そして奈瑠の家に辿り着き、早速経緯等を話し協力を求めたのだが…。

「…あなた達が来るのは分かっていたし、この村や周辺の地の変化にも気付いていた。それを含めて協力したいとも思っているわ。あなた達が考えている通り『神隠し』だし、『人と異なる存在』が関係しているみたいだしね。けど…。」

「?どうかしたの?」

既に『薬師村』や周辺集落で起きていた異変を奈瑠が察知出来ていた事に、安心していた優子と宏太。だが、奈瑠の表情は予想以上に浮かないものだった為、優子は不思議そうにする。そして改めて協力を求めるべく尋ねようとしたが…。

「今回は協力出来そうになくって…。ごめん。」

「えっ…。どうして…。」

「何かと忙しくって。だからごめん。…帰ってくれる?」

「ちょっ…!桂川さん!?」

そう言ったかと思うと奈瑠は2人を追い出し始める。その行動は常以上にためらいがなく勢いがあったからだろう。2人は拒絶する事も出来ない。そればかりか再び扉を叩いて呼びかけても反応が返ってこなくなったからか。結局、2人はそのまま帰宅する事になったのだった。


 そんな2人の寂しそうな姿を、奈瑠は室内から密かに見つめ続ける。だが、その表情は心なしか浮かない。というのも、離れていく2人を見つめていた奈瑠の傍らには『祖母』がいたのだが…。

「…そんなに見なくても大丈夫よ。一応、断っておいたから。」

「そうじゃな。じゃが…油断してはならんぞ?あの2人は簡単に諦めるような者達ではない。その事はお前も分かっているじゃろ?」

「…ええ、そうね。分かっているわ。」

2人からの依頼を奈瑠が断っているかを『祖母』は確かめたかったらしい。それを示すように奈瑠に問いかけてくる。だが、『祖母』のその行動等は常と違うものだったからか。密かに疑念を抱いてしまった事で、奈瑠の表情は一向に晴れないのだった。

 一方の『祖母』は奈瑠の問い詰めるような視線を終始受け止め続ける。奈瑠が自分に対して疑念のようなものを抱き始めているのに気が付いていたからだ。だが、『祖母』は奈瑠の疑念に自ら答えるつもりはなかった。今回の一連の『神隠し』や犯人について思い当たる節があった事。そして思い当たる節があった事で、その犯人について奈瑠に言いたくなかったのだから…。

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