第12話
それらの話を終始聞き続ける2人。だが、話を聞いている内に少しずつ冷静さを取り戻していったのだろう。普段の思考を僅かに取り戻した2人は考え始める。そして不意にこんな事を言い始めた。
「あの…。もしかしてですけど…今回の出来事って…『神隠し』ってヤツなんでしょうか?」
「私も思った!だって皆、急に消えちゃったんでしょう?お父さんとお母さんも…そうだったから…。」
思考が戻った事で思い付いた事を口にする宏太。その内容は優子も同意見だったらしい。彼の言葉に続くように声を上げる。だが、同時に両親が消えてしまった時の状況が脳裏を過ったのだろう。優子の表情は再び浮かないものになってしまった。
一方の咲は2人の意見を聞いている内に同じ事を思ったのか。無言で頷いたかと思うと、こんな事を口にした。
「確かに…私も密かに思ってしまいましたわ。皆から『人が突然消えた』と聞いた時に…『そういう可能性』がある事に。実際、以前私達も関わってしまいましたしね。ですが…。」
「?桜田門さん?」
「ですが…否定もしたくなるのです。『そういう可能性』が…『神隠しが続けて起きる事はずがない』という想いが芽生えてしまうんです。…実際、そういうものだと思いますから…。」
「確かにそうだろうけど…。」
咲からの話に内心不満を抱く優子。だが、彼女も『神隠し』が頻繁に起きるものでないという事に薄々気が付いていたのか。自然と同調するような言葉を漏らしてしまう。それは自身が体験し奈瑠と関わるようになっても本能で思ってしまうのだろう。その事に優子はまた不満げな様子を見せてしまうのだった。
それでも元々奈瑠を慕っているからか。自分の心の中で芽生えた矛盾のようなものを優子は素早く封印する。それだけでなく咲に向かって告げた。
「『神隠し』が…よく起きるものじゃないって事は私も分かってる。けど…私と宏太のお父さんやお母さんがいなくなっちゃったのは…何となく『神隠し』みたいなものだと思うの。だから…私は奈瑠お姉ちゃんに話をしてみる。そうすれば少しでも見つけられると思うんだ。相手は私を見つける事が出来た奈瑠お姉ちゃんだもん。だから…話をしたら駄目かな?咲お姉ちゃん。」
「優子さん…。」
自分の中にある矛盾した部分を告げながらも、改めて自分の考えも告げる優子。その様子から優子の意志の強さを感じたのだろう。咲は小さく呟く。それでも現状から優子の提案に一応納得もしたらしい。タメ息のようなものを漏らすと同意を表すように頷いた。
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