第10話
すると2人に向かって友人…優子には健介が、宏太には咲が近付いてくる。それだけでなく2人が抱いていた疑問等にも気が付いていたのだろう。健介と咲は答えてくれた。学校を休んだ生徒達は本人や家族の調子が悪く、身体や精神的に学校に出てこれない状況である事に…。
「えっ?風邪…とか?」
「さぁ?俺もそれは知らないんだ。ただ休んだ奴が俺の近所に住んでいたりしたから家族やアイツらから頼まれたんだ。『今日は学校に行けない。』ってな。」
「ちなみにここに来ている中高の生徒達だけでなく、小学生達の所にも休んでいる人達が多いそうですわ。まぁ、聞いたのは話だけで詳しい事情は分かりませんけどね。どの校舎も寂しい状態にはなっていると思いますわ。」
「そう、なんですね…。」
生徒達が学校に来ていない事は健介と咲からの話で分かった2人だったが、やはり理由が分からないままだったからだろう。戸惑いの表情を浮かべる。そして宏太のいる教室内からは奈瑠が考え込んだ様子で2人のやり取りを見つめていた。
そうして僅かな変化が生まれたのだが、それは更に進行していく事になる。日にちが経過していくにつれて学校に来なくなった子が少しずつ増えてきたのだ。しかも子供達の姿よりも心なしか大人達の方が見かけなくなり、宏太達は不安を抱くようになる。だが、その不安を煽るように見かける人の姿は減っていき、気が付けば見かける人数は『薬師村』と周辺集落の人口は元々の数の3分の1にまで減ってしまっていた。
更に事態は深刻化し、宏太と優子にまで影響が出てしまう。というのも、人が減り始めてから約10日後に消えてしまったのだ。自分達ではなく2人の大切な両親が…。
「…父さん?母さん…?」
「嘘…。何処に行ったの…?何で…。」
数日前から確かに両親の顔色は良くなかった。それが兆候というものだったのかもしれない。だが、顔色が良くなくても子供達に対する態度は常日頃と変わらなかったからだろう。看病等をしても2人はあまり気にしてはいなかった。すぐに体調が戻り、また日常が戻ってくると思ったから…。
だが、そんな2人の想いを裏切るように両親は消えてしまった。しかも看病していた2人が家事を代わりに行う為に離れていた一瞬の間にだ。その出来事は2人にとって当然予想していなかった事で、気が付いた途端に悲鳴に近い声を上げてしまう。それでも両親が戻ってくる事はなく、2人の悲痛な声が家中に響き渡るのだった。
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