第4話

その日の夜。少し前の両親とのやり取りのせいだろう。あの後の夕食の時間は心なしか気まずいものになってしまった。そればかりか夕食後も張り詰めた空気が居間に漂い続けているのを感じ取ったのだろう。2人は逃げるように立ち去ってしまう。更には入浴後も両親に話しかける事はせず、それぞれの自室へと戻ってしまった。

 すると胸の中に渦巻き続けているもやのようなものを、少しでも解消したかったからか。優子は自室の隣にある宏太の部屋に入っていく。そして僅かに戸惑った様子の彼に向かって呟いた。

「何で…皆、奈瑠お姉ちゃんの事を避けたがるんだろう?」

「姉さん…。」

「確かにさ…。奈瑠お姉ちゃんは『不思議な力』を持っていて…。ううん…妖っていう存在の力を持っているのかもしれないよ?奈瑠お姉ちゃんの『お祖母さん』も『お父さん』もそういう存在なんだって分かったし、だから力を持っているんだって何となく分かっていた。だけど…だからこそ何なの?奈瑠お姉ちゃんは私達の事を助けてくれたんだよ?それも何度も…。」

「そう、ですね…。」

「なのに…酷いよ…。皆して…。」

「…。」

奈瑠の事を慕い続けているからだろう。優子は眉間にシワを寄せ俯きながら悔しそうに呟く。だが、その彼女の姿を宏太は見つめる事しか出来なくなっていく。両親の言葉もあって再び迷いが生まれてしまったのだから…。




 翌日。昨夜の重苦しい出来事が全て嘘であったように天候は秋晴れの気持ち良い状態だった。だが、やはり昨晩の出来事は何らかの影響を生んでいたらしい。朝から両親がいて昨晩の夕食時と同様に朝食も一緒に摂れたのだが、誰も自分から言葉を発してこない。むしろ両親は自分達が間違っていない事を示したかったのか。妙な威圧感を漂わせ子供達に何も言わせないような気を出していた。

その両親の様子のせいか。昨晩から精神を乱し続けていた優子は何とか朝食を口にはするものの、その表情は目元を赤く染め張り詰めたものを浮かべている。そして宏太の方も悩み考え込んだりもしていたからか。何とか食事は摂れるものの、声を発する事は出来なくなってしまう。それにより今朝の『柳生家』は重苦しい空気が立ち込める。まるでお通夜があったような不快さが感じられる朝だった。

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