第49話
そんな事を気にしながらも3日ほど自宅で静養した後。妙に重く感じていた体も、以前と変わらない感覚になれたからだろう。家族や医師の了承も得た事で、咲は再び学校に通う事を決意する。そして登校初日には家族に見送られながら自宅を後にした。
久し振りに行く事が出来た学校は、長く休んでいた咲が再び登校してきたからだろう。驚きや喜びにより賑やかな空気に包まれている。それでも校内を漂う温かな雰囲気は以前と何ら変わってない事を咲は感じ取ったらしい。安心したように体の強張りを解いていく。すると体の強張りが解けた事を実感し、気分が浮上し続けているからか。勢いに任せるように咲は奈瑠との接触を改めて決意する。自分を助けた理由等を尋ねる為に…。
だが、ようやく接触し尋ねてみたというのに、結局奈瑠に対する苛立ちは再び芽生える事になる。というのも、自分を助けた理由をいくら問いかけても他人に頼まれた事しか口にしなかったのだ。更に相手についても宏太の名が出てきた事には喜びを感じていたのだが…。
「あなたの家に住む者…『江戸』と『彼岸』にも頼まれたから。」
「えっ…?」
しつこく聞いてくる咲の姿に面倒臭さを感じているのだろう。淡々とした口調で宏太以外の者の名も正直に口にする奈瑠。だが、それを聞いた咲は戸惑いの声を漏らしたと同時に怒りも込み上げてくる。奈瑠が告げた2人の事が分からなかったからだ。だからこそ適当な事を言われたと感じた咲は感情が高ぶってしまったらしい。大声で言い放った。
「『江戸』と『彼岸』ですって…!?適当な事言わないで下さい!そんな方々、私の家にはいませんわ!」
「…まぁ、そうでしょうね。だって『あの2人』は表に出るような存在じゃないし。でも事実は事実だし、聞かれたから答えただけ。逆ギレするのはお門違いだと思うけど?」
「…っ!もう良いですわ!失礼します!」
怒鳴り声のようなもので反論する咲だったが、相手の奈瑠は自分の非を認めようとはしない。むしろ相変わらずの口調と態度で答えてくる始末だ。何より答えてくる瞳や表情から奈瑠が嘘を吐いていないのも察してしまったからだろう。咲は思わず息を呑んでしまう。だが、元々快く思っていない奈瑠を相手にしているからか。再度問いかける気は失われてしまったらしく、咲は捨て台詞のように言葉を吐き出すと勢いよく立ち去ってしまう。自分の背後で呆れた表情を浮かべながら奈瑠が見つめていた事に気付かないまま…。
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