第46話
だが、『蛇女』の野望に近い行為は全て崩されてしまう。粉砕させるほどの力で締め上げていたはずの自分の体に強い熱を感じたのだ。そればかりか同時に激しい痛みも感じた為に『蛇女』は勢いよく離れたのだが、そこで衝撃的な光景を目にする事になる。自分の体の一部が焼けているという光景を…。
『ッ!?何デ…!?』
「私の力で焼いたのよ。」
『…ッ!?』
その光景を見てしまったからか。直前よりも強い熱と激しい痛みを感じてしまった『蛇女』は声を上げて動揺も示す。すると『蛇女』の声は傍にいる奈瑠に当然聞こえていたらしい。動揺を含ませたその呟きに対し答えてくる。それでも『蛇女』は奈瑠の説明よりも『ある事』で動揺を強めてしまう。奈瑠の姿が直前のものとは違い、金髪に獣の耳が生えていたのだから…。
『ソノ姿…!マサカ…アナタ…!』
「…別に驚くほどの事じゃないでしょう?最初は気付けれなかったみたいだけど、後になってちゃんと気が付いたようだし。そうでしょう?…『蛇寿美(じゃすみ)』さん?」
『…ッ!?私ノ真ノ名ヲ…!?ヤッ、止メテ…!』
直前までは強化されているはずの自分の体を焼かれた事や、姿が変わってしまった奈瑠に対して動揺していた。だが、それ以上に驚き動揺する事態が起きてしまう。『蛇女』の真の名を奈瑠が知っていたのだ。それは妖にとって命を縛られている事と同じもので、現に『蛇女』…『蛇寿美』はその名を口にされただけで恐怖を感じたらしい。悲鳴に近い声を上げながら更に距離を置こうと後退りをしている。真の名が知られた時点で逃げられる場所はないというのに…。
一方の奈瑠は混乱し始めてもしまっている『蛇寿美』を呆れたように見つめる。それでも蛇寿美が逃げようとしている事も分かっているからだろう。小さくタメ息のようなものを漏らしたかと思うと再び口を開いた。
「動かないで貰えるかしら?蛇寿美。あなたに頼みがあるの。」
『タッ、頼ミ…?』
「ええ。あの娘を縛っているものを解いて、術で闇の感情を具現化させる行為を止めて欲しいの。当然二度と人前に姿も現しては駄目よ?そうすれば丸焼きは回避させて上げる。ただし破ったら…。」
『分カッテマス!分カッテマスカラ…止メテ下サイ!』
『蛇寿美』という『蛇女』の真の名を口にしながら一旦動きを封じさせた上で指示をする奈瑠。すると真の名を告げられた事で自然と相手を縛る術が発動してしまったらしい。その証拠に『蛇寿美』は動く事が出来なくなる。更に動けなくなった事で強い恐怖も感じたのか。『蛇寿美』は切迫した声を発しながら、咲に施した術を解除しようと試みる。その様子に自分の指示を聞いてくれたと分かったからか。ある程度の動きが取れるように術を緩和させる。そして自分の指示通り咲の術を解き空間から出ていくのを見つめるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます