第4話
更に1週間が経過した週末。宏太は『薬師村』から出ていた。彼が教えてくれた少女に会う為だ。もちろん確証は得られておらず、事態が急展開するとは思えなかった為に両親にはこの旨は伝えていない。だからこそ宏太は1人で少女を探し会うつもりだった。
だが…。
「場所が違うとやっぱり空気も違うんですね~。」
「えっ、ええ…。というか、本当に付いてきても良かったんですか?桜田門さん。」
「はい。彼を紹介したのは私ですし、そもそも今回の話を出したのも私ですから。しっかりと見届けたいんです。何より…柳生君の心を少しでも晴れさせたいのですから。」
「はぁ…。ありがとうございます?」
自分と一緒に村から出てきてしまった咲の姿に宏太は不思議そうに尋ねる。だが、当の咲がそれを気にする素振りはなく、村に戻る気もないらしい。宏太の問いかけに答えつつも足は止めず、少女の大体の居場所について書かれたメモを手に歩き続ける。その姿に宏太は終始不思議そうにしながらも、何とかお礼の言葉を呟く。咲の内側に秘めている想いに気付かないまま…。
そうして戸惑いながらも少女に会う為に歩き続ける宏太。だが、戸惑う事態が更に起きてしまう。何故ならメモに書かれた場所に向かっても廃墟しか建っておらず、当然人気がない状態だったのだから…。
「おかしいわね…。道を間違えてしまったのかしら。それとも…彼が嘘をついていたのかしら…。どう思います?柳生君。」
「えっ、えっと…。」
咲に問われるものの、宏太は上手く答える事が出来ない。無理もない。初めての場所である上に、メモ自体も未だに咲が持ち続けているのだから。本来ならばそれは指摘するべき事なのだろうが、宏太自身も辿り着けない事に段々焦り始めているからか。結局、曖昧な返事を漏らすだけだった。
丁度そんな時だった。宏太の耳に謎の声が聞こえてきたのは…。
『そっちじゃないよ。彼女のいる場所は…。』
「えっ…?」
『こっち。こっちの…山の中の方だよ。』
「山の…中?」
「柳生君…?」
急に何処からか聞こえてくる謎の声に反応してしまったからだろう。宏太は思わず声を出してしまう。そればかりか明らかに怪しい声だというのに、何かに誘われるがまま山中の方へ足を進める。咲の呼びかけにも当然答えずにだ。それに困惑する咲だったが、宏太が勝手に山中に向かって進み続けるからか。結局、困惑した状態で彼に付いていった。そして山中に入っていく様子を草木の陰から、小さな何かが監視するように見守るのだった。
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