第18話

こうして廊下を突き進む事しばし。歩き続けた真理が辿り着いたのは『生徒会室』のある廊下の曲がり角だった。

(やっぱり…静かね。)

他の教室付近には他の生徒達も沢山いて賑やかだったが、その部屋の周辺は不思議と静かだ。無理もない。生徒会室は入り口から入って校舎の一番奥の棟にあるのだから。ここの棟はただでさえ特別教室しかなく、授業で使う事が無い限り生徒が近付く事はない。そして『生徒会室』は廊下の一番奥にある教室の為、更に生徒はいないのだが…。

(予想通り…生徒会長は『生徒会室』にいるのね。)

他の生徒が噂しているのを漏れ聞いた真理は、昼休みに五月晴撫子が『生徒会室』で昼食を食べ休んでいるのを聞く。それが証拠に、生徒がいないはずの『生徒会室』の前には見張りのように1人の男子生徒が立ち辺りを見渡している。だが真理は気にもせず、その男子生徒の元に近付いた。


真理の気配に気が付いたのだろう。男子生徒はこちらを見ていたが、真理が退かないのが分かると駆け寄り立ち塞がった。

「君!一体何の用です!?会長は今休まれていて…!」

「…だから来たのよ。どいて。」

止めようとする男子生徒を押し退けるように真理は進む。そして声もかけず扉を開けた。

「…挨拶もなしに開けるだなんて…失礼じゃないかしら?雨宮さん。」

口調は丁寧で穏やかであるが明らかに不機嫌な声で真理に声をかける。だが、当の真理は気にもせず撫子の前に行くと口を開いた。

「…別に良いでしょう?話が済んだらすぐに出て行くわ。」

「まぁ?話って何かしら?」

真理の言葉に対して撫子は開き直るように答える。その姿に真理は呆れながらも再度口を開いた。

「…とぼけないで。アンタの耳にも入っているでしょう?雲野桃馬が学校を休んだ事。」

「…そうみたいね。風邪でも引いたのかしら?」

「そんな訳ないでしょう。だって彼が倒れたのは…アンタのせいなのだから。」

それを聞いた瞬間、撫子の動きが一瞬止まる。そして顔を上げると真理を見つめる。一方、何か言いたげに見つめられていた真理だったが気にせず話を続ける。

「アンタがほぼ強制的に彼を生徒会に引き込んだのは知っているわ。その後、かなり働かせていたのもね。そのせいで彼は無理して倒れてしまったのよ。」

「そうなの?でも、どうしてそれで私が注意されるのかしら?別にあの仕事は急ぎでもなかったのよ?それを急いだのは彼が勝手に行った事。そもそも…私は彼の事を愛しているのよ?愛している人をどうして苦しませるような事をしなければならないのかしら?」

「『愛している』…からでしょ。」

生徒会長らしく堂々と宣言する撫子だったが真理は切り捨てる。そればかりか鋭い眼差しを受けながらも淡々と話を続けた。

「…愛しているからこそアンタは彼を引き込んで無理させたんでしょ?彼が自分に振り向かない事に気が付いたから…。だからアンタは彼の性格も考慮して大量の仕事を与えたのよ。まぁ…『愛しさ余って憎さ百倍』って感じでね。」

「っ!」

全てを理解したような言葉に撫子は顔をしかめ、更に強い目つきで真理を睨む。だが真理はそれを受けても表情を変えず、撫子を見つめていた。

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