第4話
仲良く隣り合って弁当を食べる2人。すると、そんな2人に1人の人物か近付いて来た。
「…一緒に食って良いか?」
「あれ?桃馬?」
疲れた表情をしながら近付く少年…雲野桃馬の姿に夏妃は不思議そうにする。だが、そんな姿にも構う事なく桃馬は空いた椅子を2人の近くに引き腰かけた。
「…何か疲れた顔してるけど…大丈夫か?」
タメ息をつきながら腰かけた桃馬の姿に夏妃は声をかける。一方の真理はというと桃馬の表情や手に持った包みを見て何かを理解したらしい。息を漏らすと疎い夏妃にも分かり易いように口を開いた。
「どうせ…また女子から弁当を強引に渡されたんでしょ?」
「…正解。」
呆れたように問いかける真理の姿に桃馬は力なく答える。そして渡されたと思われる包みを数個机に並べた。
「良いな~!僕、なかなか貰えないから羨ましいよ!」
「そりゃ…女子が女子に『愛妻弁当』を渡さないわよ…。…っていうか、アンタも断れば良いのに…。」
「あんな公衆の前で断れるか…。」
そう言う桃馬の顔は青ざめている。それほど目立ちたがり屋な性格ではない桃馬にとっては余程嫌な状況だったらしく、思い出してしまったのか再びタメ息をついた。
だが、落ち込む桃馬と呆れる真理とは違い、夏妃は明るい声で話しかける。
「なぁなぁ!この弁当貰って良いか!?どうせ桃馬は食べないんだろう?」
「…相変わらずだな、お前は…。まぁ、別に良いけど…。」
瞳を輝かせながら弁当を貰おうとする夏妃に桃馬は呆れながらも弁当を差し出す。すると笑顔で夏妃は弁当を受け取り早速食べ始める。その表情はとても嬉しそうで桃馬は思わず釘付けになる。笑顔で弁当を食べる夏妃とそれを真剣に見つめる桃馬。そんな2人の友人の顔を真理は見比べながらタメ息をつくのだった。
こうして楽しい昼食タイムも済み午後の授業も終えて。学生達も帰る時間となり次から次に校舎を離れていく。その中には当然真理もいるのだが、元々友達が少なく人が避け易い性格の彼女の周りには誰もいない。それは別に構わないのだが、帰りの時間になると夕日と相まって何だか寂しく感じていた。
だが、そんな真理の心境を打ち破るように、背後から馴染みの声が響く。
「真理~!一緒に帰ろう!」
その声に真理が振り返ると予想通り夏妃が笑顔で駆けてくる。それを見ていた真理は少し笑みを浮かべるが、周りの学生は気付かないようだ。だが、笑みを浮かべられていた夏妃は何となく気付いたらしく笑顔で声をかける。
「何だか嬉しそうだな。何かあったのか?」
「別に…。アンタと帰る事は悪くないなと思ってね。」
笑顔のまま首を傾げる夏妃に真理は淡々とした口調で答える。一方の夏妃は相変わらず不思議そうにするも、拒絶されていない事が分かると真理の隣へ付く。そして2人は隣同士話し合いながら校舎を離れた。
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