(第十四話)
第57話
闇夜に響く何かを破く音。その音は2,3回聞こえ、後は何も聞こえなくなる。
「これで…。もう大丈夫…。」
足元に散らばる切れ端となった葉を見て奈々は深く安堵する。
と、安心したせいか、急に奈々の目の前はぼやけ強烈な眠気に襲われる。
(えっ…。一体…、何なの…?)
何とか奈々は踏ん張ろうとするが、歩き続けて疲労が溜まった足には既に力が残されていない。結局、膝から崩れ落ちると目を閉じ、そのまま意識を失ってしまった。
目を閉じ意識を失っている間、奈々はこんな夢を見た。その夢は1人の少年が出てくるモノで、木々に囲まれた山の中を1人で歩いていた。
「はぁ…。腹減ったな…。」
山の中を歩くその少年は裸足で服も安物でつぎはぎだらけ。見ただけで裕福でない事が分かる。そんな少年は草を掻き分けながら『食べられそうな物は無いか?』と探し回る。
すると草を掻き分けていた少年の手が突然止まる。その表情は固く震える手で見つめるモノに触った。
「おい…。大丈夫か…?」
少年が声をかけ揺すったその正体は一見すると1人の少女だったが、その金髪の部分からは2つの獣の耳が生えていた。耳の形からすると狐だろうか。
そんな疑問を抱きつつも少年は不思議な少女の体を揺すり続ける。と、何度か呼びかけ続けたおかげか狐の少女はようやく目を開いた。
「あなたは…、誰…?」
「え…?あっ…。」
夕日のような朱色の瞳に見つめられ少年は思わず言葉を失う。すると、そんな少年の姿を改めて見つめていた狐の少女が少しずつ後ずさりを始める。
「いや…。来ないで…。私を…、殺さないで!」
「ちょっ…!危ない!!」
怯えた表情を見せる狐の少女は少年の元から去ろうと立ち上がる。だが、突然足に走った痛みに堪えきれずに膝をついてしまった。
「一体どうして…。」
狐の少女は恐る恐る痛みの走る足を見ると、そこには何かの刃の欠片が右足首に刺さっている。その欠片を見て狐の少女は昨晩近くの村人に追われ怪我をした事を思い出した。
「はぁ…。私はダメな狐です…。」
タメ息をつきながら小さく呟き狐の少女は震えた手で自らの足首に刺さっている刃の欠片に手を伸ばした。
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