第47話
しばらくヒトツメの体を撫でていた奈々は撫でながら辺りの様子を伺う。周りは闇に覆われ風はなく静けさと共に妙な雰囲気を漂わせていた。
(でも…、こんな場所に怜が言ってた『契約書の木』が本当に存在するのかしら?)
ヒトツメを抱き抱えたまま奈々は誘われるように歩を進める。だが心の中では『もし、ここまで来て見つからなかったら…。せっかく怜が自らの力と引き換えにヒントをくれたのに…。』という数々の不安が芽生え始める。それでも以前怜が教えてくれた『元気が失われていると心に隙が生まれ色んなモノが憑きやすい』という言葉を思い出し我に返る。そして
(…しっかりしなきゃ!家を救えるのは私しかいないのだから!)
と頭を振るい改めて決意すると奈々は再び歩き始めるのだった。
しばらく山の中を彷徨っていると、闇に包まれた景色の中で小さな光が見える。不思議に思いつつも奈々の足は自然とその光の方へと進んでいく。そして目を凝らしよく見ると、その正体は1本の光り輝く木だった。更にその木の枝には何やら文字が書かれた葛の葉がいくつも付いている。
「これが…、怜の言っていた『契約書の木』かしら…?」
奈々は恐る恐る木に触れながら1枚1枚葉に書かれている内容に目を通していく。そして遂に自分の家の事が書かれている葉を見つける事が出来た。
「あった!これで私の家にかけられている妙な力が解けるかも!」
思わず笑顔になる奈々。だが安心したのも束の間、もう1つ気になる文字が目に入る。それは『決められた血を引く人間と結婚しなければ狐の妖力は失われ消滅する』というものだった。
「…!?これって…。」
その文を見た奈々の胸が妙にざわつき始める。もしかして怜が急に力を失い始めているのはこれが原因なのか…?新たな疑問が生まれた奈々の心には、いつの間にか晴れやかな気持ちが失われようとしていた。
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