第46話
「今からあっしは奈々さんを乗せやすいように体を大きくするでやんす。だから体が大きくなったらあっしに掴まって『血の示す場所へ』と念じるでやんす!」
「分かったけど…。どうやって体を大きくするの?」
ヒトツメの体は奈々が抱き抱え肩に乗れる程の大きさだ。決して大きくはない。大体、出会った時から変わってはいないのだ。そんなヒトツメがこの場で奈々を乗せられるぐらいまで体を大きくするのは無理があるような気がするけれど…。
「大丈夫でやんすよ!奈々さん。」
思わず心配そうな顔をする奈々を見て安心させようとヒトツメは振り返り元気よく言う。そして再び背を向けると何か集中し始め息を大きく吸い込む。
するとヒトツメの体が徐々に大きくなり始める。初めは気のせいかと思われたが確かに大きくなっているのだ。
「ちょっ…。大丈夫なの!?」
思わず声をかける奈々だったがヒトツメは息を吸い続ける事を止めない。そして息を吸い続けて約2分。気付くとヒトツメの体は奈々を余裕で乗せれるほど大きくなっていた。しかも、もう息が吸えないからかヒトツメの体の変化も止まっていた。
「ありがとう。ヒトツメ。…じゃあ乗るわね。」
奈々は驚き戸惑いつつも無言になっているヒトツメの丸い体に乗る。紺色の毛は夜風になびいて揺れている。普段から触り慣れているはずなのに全身でその毛に触れるのは何だか気持ち良い。疲れもあってからか毛の感触を味わった奈々に眠気が襲う。だが頭を振って眠気を吹き飛ばすと口で念じた。
「―我を導け。血の示す場所へ!」
すると先程奈々が描いた陣が強く光り始める。更にその様子に驚く奈々を無視するかのように渦状の風が生まれると手紙ごと真上に飛び上がった。そして、あっという間に周りの木々よりも高い位置に到達すると少し宙を漂い一気に落下していった。
(このままじゃ地面に叩きつけられる!)
あまりの急降下に奈々は思わず目を閉じる。と地面に接触した瞬間、大きく膨らんだヒトツメの体がクッションとなり強い衝撃を和らげ、何回か上下に跳ねると動きが止まった。
「何とか着地出来たみたいね…。って、大丈夫!?」
安心したのも束の間、ヒトツメの体が見る見るうちにしぼんでいく。更に、よほど力を使ったせいか気を失ってしまった。そんなヒトツメを奈々は優しく抱き上げ
「…ありがとうね。ヒトツメ。」
と言い、小さくなった体を撫でるのだった。
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