第45話
一通り奈々に撫でられ満足したのかヒトツメは手から飛び降りる。そして奈々の方を振り返り
「今から奈々さんとあっしはあの狐の言ってた場所へ向かうでやんすよね?」
と尋ねる。
「…ええ。でも、どれぐらいで辿り着けるか分からないのよね…。」
奈々は頷きカバンから怜が書いてくれた手紙を取り出す。と、その手紙を見たヒトツメは何かを思いついたのか
「…そうでやんす!その手紙を使えばすぐに目的の場所へ行けるかもしれないでやんす!」
とバネのような足で飛び上がり目を輝かせて言った。
「…?手紙を使ってすぐに行けるってどういう事?」
「正確には手紙と奈々さんの力とあっしの力を合わせる必要があるでやんすが…。要は術を使うでやんす!」
「そんな術があるの?」
驚く奈々にヒトツメは頷く。そして術の方法を説明し始めた。
「良いでやんすか?この術の為に用意するのは手紙と字が書ける棒状の物やんす!」
奈々は頷き丁度道の脇に落ちていた少し丈夫そうな木の枝を拾う。その様子を見たヒトツメは頷き続きを話す。
「まず木の枝で地面に円状の陣を描くでやんす。大きい方が強い力になるから大きい方が良いでやんす。ちなみに陣の形っていうのは…。」
ヒトツメの指示を聞きながら奈々は枝で地面に陣を書いていく。そして数分後に無事書き上げる事が出来た。
「次にあの狐の男が書いた手紙を広げるでやんす。そしてその手紙の中で奈々さんが行きたい場所が書かれている1文を術者の血…つまり奈々さんの血で囲うでやんすよ。」
奈々は右手の親指の先を歯で噛んだ。指先から血が滲み出るのを確認すると『母の山の中を歩いていたら1本の木を見つけた』と書かれた1文を囲うように指を擦りつける。
「…出来たわ。それで?」
「手紙をさっき書いた陣の中央に置くでやんす。そして奈々さんも中央に居るでやんす。」
ヒトツメの言葉通り奈々は手紙を地面に置き中央で立ち尽くす。するとヒトツメはその手紙の上に乗った。
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