(第十一話)

第39話

翌日。再び怜と話そうと決めた奈々は気合十分で会社へと向かう。だが、どんなに待っても仕事の開始時間が迫ってきても怜は姿を現さない。

「…ねぇ。夕顔さんが来てないみたいなんだけど?」

「そうですね…。連絡ぐらい入ると思ってたんですけど…。」

奈々の問いかけに女性社員は不思議そうに答える。どうやら会社にも連絡は入ってないらしい。

(まぁ、遅刻っていう線もあるし、あまり気にしなくても良いか。)

奈々は自分の心にそう言い聞かせるといつものように仕事を始めた。だが結局、その日怜は姿を見せず時間だけが過ぎ終業時間となってしまう。そればかりか翌日も翌々日も怜は会社に姿を出さなかった。

 そして週末。さすがに会社へ姿を出さなくなった怜に対し皆は不安になる。そして口々に噂話をするようになっていた。

「…どうして夕顔さん出勤しないのかしら?」

「…そうね。私達はおろか上司達も分からないらしいし。」

「…もしかして部屋で死んでるって事はないよね?ほら、最近多いじゃない。」

1人の女性社員の言葉に重い空気が流れ、その場に居た社員達は無言となる。そしてある決意をすると1人の社員の元へと向かった。

「…桂川さん。ちょっと良いでしょうか?」

突然話しかけられ、仕事に集中していた奈々の体がビクッとなった。

「あっ!ゴメンなさい。…何かしら?」

奈々は驚いた様子を見せながらも話しかけてきた女性社員の顔を見つめる。

「えっと…。桂川さんにお願いしたい事がありまして…。」

「良いわよ。私に出来る事ならね。」

奈々の穏やかな表情に女性社員は決意すると改めてある事を口にした。

「夕顔さんがずっと休んでいるのは知ってますよね?」

「ええ。私もこの会社の社員だし同じ部署でもあるからね。…どんな理由で休んでいるかは分からないけれど。」

「なら、夕顔さんがどんな様子なのか見て貰っても良いですか?」

「…えっ?」

女性社員の言葉に奈々は思わず驚きの声を上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る