第37話
「お前は確か奈々さんと同じ会社で働く妖!噂は聞いてるでやんす!お前のせいで奈々さんは苦しんでるでやんすよ!」
「そんな事は分かってる!だけど…。」
「分かってるじゃないでやんす!ちゃんと謝る…って、あれ?何か前よりも力が弱くなってるでやんすか?」
ヒトツメは怜の妖力がかなり弱くなってるのを感じ取る。だが怜はその事には触れずに
「頼む…!この手紙を奈々さんに渡すだけで良いから!」
と再度頼み込んだ。その必死な姿にヒトツメは戸惑うが
「…分かったでやんす。この手紙を奈々さんに渡せば良いでやんすね?」
と言い渋々受け取った。すると安心した怜は少し微笑みを浮かべ
「ありがとう…。協力してくれて…。」
と消え入りそうな声で言い、その姿を消してしまった。
「まったく…。一体、何なんでやんすかね?」
突然現れた怜の行動にヒトツメは頭を傾げるのだった。
そんなヒトツメがしばらく待っていると、会社を出た後に安全な道を通っていた奈々が現れた。
「お迎えありがとうね。ヒトツメ。」
「あっ、お帰りなさいでやんす!」
出迎えてくれたヒトツメにお礼を言う奈々。と、ふと奈々の目にヒトツメが手紙のような物を持っているのが目に入った。
「…ねぇ、ヒトツメ。一体、何を持っているの?」
「あっ、そうでやんす。奈々さんの会社に勤めている妖から奈々さん宛の手紙を預かったでやんすよ。詫びの言葉でも書いてあるでやんすかね?」
「ふーん?そうなの?」
奈々は不思議に思いながらヒトツメから手紙を受け取る。
「怜の奴がね…。手紙なんか渡されても私は謝る気ないし。…ってか、手紙じゃなくて直接謝って欲しいんだけど!」
「そうでやんすね。…あっ、でもそれは難しいのかもしれないでやんす。何か大分妖力が弱まってるみたいでやんすし。」
「どうせ、また私を騙す為に何か企んでるんじゃないの?」
奈々は嫌味たっぷりに言う。だが、せっかくヒトツメが受け取った手紙を捨てたくなかった為、自分のカバンに受け取った手紙を入れる。その姿にヒトツメは何だか嬉しくなった。そしていつものように奈々の肩に乗るとご機嫌な様子で一緒に帰るのだった。
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