第26話
列車から降り奈々は1人自宅を目指し歩いていた。辺りは薄暗くなり怪しい雰囲気が漂っている。
「何か嫌な予感がするな…。」
自分以外誰も居ない道を歩きながら奈々は小さく呟く。前まではこんな道も平気で歩いていたのに何故か恐怖を抱いて心細く感じる自分が居る。それほど奈々にとって怜の存在が大きくなり始めていた。
と、奈々が俯きながら歩いていると目の前に1人の男性が突然現れる。
「お久しぶりです。桂川奈々様。お元気でしたか?」
「-っ!貴方は夕姫の…!」
不意打ちを食らい驚きの声を上げる奈々。だが、そんな奈々の様子を気にすることなく男性は
「夕姫様がお待ちです。さぁ参りましょう。」
と狐目で奈々を見つめ言う。その言葉に奈々は急に現実へと引き戻される。そしてタメ息をつくと狐男の後ろを黙って付いて行くのだった。
狐男が持つ明かりの灯った提灯を見つめながら奈々は山の中を歩く。辺りはすっかり暗くなり頼りになるのは赤い光を放つ提灯だけ。その光を見失わないよう奈々は必死に狐男に付いていった。
すると、そんな奈々の遥か前方に赤い光が見える。それは以前と同じように複数存在しその中央には誰かが座っていた。
「さぁ、そのままお進み下さい。」
狐男はそう言うと前へ進むのを止め奈々の隣へと付く。そして奈々が夕姫の前まで来ると膝をつき2人を見守るように控えていた。
「久しぶりじゃの!桂川奈々よ。元気にしていたか?」
夕姫は笑顔を浮かべ奈々に話しかける。その姿は初めて会った時と変わらず闇夜だというのに怪しく光を放っている。一方の奈々は夕姫を見つめ挨拶には答えない。そして力の宿った瞳で夕姫を見つめ
「…どうして私を呼び出したのですか?」
と強く言った。
「挨拶もせずに逆に質問をするとは…。さすが桂川家の者というか…。」
「誤魔化さないで答えて下さい。何故、呼んだのですか?」
奈々の態度に夕姫は呆れるが奈々は強い口調のまま再び尋ねる。そんな奈々を見て夕姫は小さくタメ息をついた。
「お前を呼び出した理由だなんて…。そんなのは自分で理解しているだろう?早く決意した方が良いと思うが…。」
「だから…、私は狐と結婚しません!」
奈々は先程よりも更に強く答えた。
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