第24話

「…では、そろそろ帰りましょうか?自宅近くまで送りますよ。」

怜はそう言うと奈々の前に手を差し出す。その手は白い肌に覆われ一見華奢に見えるが、先程の力を見たせいか奈々の目には優しくたくましく感じる。

 と、ようやく顔の赤みが治まった奈々は顔を上げると

「何で私の危機に気が付いたの?どうして私の事を助けたの?」

と怜を見つめ尋ねた。すると、一瞬怜は何かを言いかけたがその言葉を飲み込む。そして再び奈々を優しく見つめると

「…今日の奈々さんはいつもより元気が無さそうでしたから。元気が失われていると隙が生まれて色んなモノが憑きやすいですしね。だから尾行していたんですけど…迷惑でしたか?」

と話す。最初の飲み込んだ言葉が一瞬気になったが、奈々はあえて追求しようとはしなかった。それよりも、自分の変化を読み取り気遣ってくれた事に嬉しく感じた。

「…ありがとうね。」

奈々は精一杯の笑顔で怜にお礼を言う。そして怜の手を取ると2人で歩き始めた。

 少しの間、2人は手を握り合い歩いていた。初めて異性と手を繋いでいる事に気が付いた奈々は今更ながら緊張していた。と、そんな歩く2人の近くの草むらが突然揺れ始める。そして、その草むらから紺色の小さな妖が飛び出してきた。その瞬間、怜は奈々から手を離し構え炎を生み出す。だが奈々はその手を掴むと

「…違うわ!攻撃はしないで。この妖は私を迎えに来ただけだから。」

と言い止めようとする。その言葉を怜は理解する炎を消す。そして役目を終えたと言わんばかりに

「分かりました。では、僕はここで…。もし送りが必要なら声をかけて下さいね。それでは、また明日…。」

と言って飛び上がり姿を消す。奈々達はその様子を静かに見送るのだった。

 「あれが奈々さんが言ってた奴でやんすか?確かに強そうな力を持っているでやんすね。危うく消されるところでやんしたよ。」

先程の怜の行動と炎を見たヒトツメは冷や汗をかく。そんなヒトツメを抱き上げ奈々は少し笑みを浮かべる。そして

「…うん。思った通り妖だったけど…。でも人の感情を読み取れる程、優しい心を持ってるみたいだわ。」

と怜を擁護するかのように優しく言うのだった―。

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