(第六話)
第22話
親戚達の苦しい状況が判明した休日明け。奈々は暗い表情で歩いていた。既に仕事終わりの時間だった為に夕日は沈み、辺りは薄暗くなっている。そんな道を考え事をしながら歩いていた奈々は周りの様子に全く気付かなかった。いつの間にか妖達に囲まれていた事を…。
「…いっ!ちょっと待ちな!」
誰かに話しかけられた気がしたが奈々は気付く様子はない。
すると急に背中が重くなり奈々は前のめりに倒れ込んだ。
「…!?」
慌てて振り返る奈々。と、そこには先日倒した口だけの女が自分の顔のすぐ横にいた。
「…するのよ!離しなさい!」
奈々はその女の顔を思い切り殴りつける。そして、ひるんだ隙に体を起こし走りだした。
「…とりあえず一旦逃げないと!」
奈々は後ろを見つめながら走る。だが、すぐに何かにぶつかり体が止まってしまった。
「…なっ!?」
奈々は言葉にならない声を発しながら、前を向きぶつかったモノを改めて見つめる。そこには、これまた先日倒した斧を持つ牛男いた。
「…捕まえた!」
牛男はそう言うと斧を持っていない方の手で奈々の体を鷲掴みにする。そして奈々の体を少し持ち上げ押し倒し動かぬよう押さえつけると、もう片方の手で斧を振り落そうとした。
(マズイっ…!このままじゃ…やられる!)
逃げようともがくも強い力で押さえつけられ体は動かない。奈々は思わず目を閉じる。
その時だった。
「ギャアアー!」
と、突然牛男が悲鳴を上げる。そして体も急に軽くなり動けるようになっていた。状況が分からなくなった奈々は目を開ける。すると自分の目の前で牛男が顔を押えている。よく見るとその顔の表面には火がついていた。更に奈々の後ろにいた女の妖も火のついた頭を押さえながら慌てている。
(一体何が起きたの…?)
奈々は立ち上がり牛男と距離を置きながら辺りを見回す。と、女の妖の後方から誰かが歩いて来た。
(えっ…。あの人って…。)
奈々はその顔を見て一瞬驚く。何故なら、そこに居るのは奈々の勤める会社に入社したばかりの男性…夕顔怜だったからだ。
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