第20話
列車から降りアパートへ帰る為、歩き続ける奈々。いつの間にか日は落ち辺りには怪しき雰囲気が漂い始める。だが奈々は気にする様子もなくいつものように歩いていた。
すると草むらと木の陰から複数の妖が飛び出してきた。考え事をしていた奈々は不意打ちを食らい攻撃を受けそうになる。だが、持ち前の身体能力でかわすと自慢の拳で妖達を倒していく。そして無事に追い払うことが出来た。
「ちょっと危なかったわ…。」
考え事をしていたとは言え油断していた奈々は息を切らし呟く。
その時、草むらが再び揺れ始める。思わず構え睨み付ける奈々。と、その草むらから出たのは、いつものように迎えに来たヒトツメだった。
「あ~、良かった…。」
安心した瞬間、奈々の体から力が抜けた。
「迎えに来たでやんすが…。何かあったでやんすか?」
疲れた表情と態度を見せる奈々にヒトツメは心配そうに近付く。
「うん…。ちょっと会社の環境も変わってね。」
「そうでやんすか…。まぁ、とりあえず家に帰って夕飯を食べようでやんす。もう準備は出来てるでやんすから。」
ヒトツメはそう言うと奈々の肩に飛び乗る。その様子に奈々は頷くと自宅に向かうのだった。
「…えっ?奈々さんの会社に新しい人が入ったでやんすか?」
食事をする奈々の目の前でヒトツメは尋ねる。奈々はご飯を口に含みながら頷いた。
「うん…。顔が良くて優しそうな雰囲気だから女性社員達には人気みたいなんだけどね。…でも私には普通の人間に感じないっていうか。ちょっと近寄りがたいっていうか…。」
「奈々さんがそう感じるのなら人に化けられる妖かもしれないでやんすね。でも妖の中でもよっぽど力が強い部類でやんすよ?そんなのはこの辺に居ないはずでやんすけどね…。」
『力が強くてこの辺に居ない妖』…。ヒトツメからの話を聞いた奈々は、一瞬夕姫の顔と言葉を思い出す。
(もしかして彼女が関係してるのかしら…?)
ふと思った奈々だったがそれ以上は深く考えなかった。それよりも桂川家の人達の現状が気になって仕方がない。結局、休日に視察でもしようと心に決めるのだった。
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