第14話

会議が終わり皆は再び散り散りに去っていく。先程まで賑やかだった室内は一気に静かになり、風が時々通り抜けるだけとなった。

 そんな静かな室内で奈々は1人考え込んでいた。考える内容はあの祖父からの出紙の事。手紙を公開して今日に至るまですぐの出来事だったので、何だか偶然とは思えなくなっていた。

(やっぱり、お祖父ちゃんの手紙に書かれていた事は事実なんだ。このままじゃ桂川家は滅びてしまう。…止める為にはやっぱり狐と結婚するしかないの…?)

奈々は頭を抱え込みながら悩み始めるのだった。

 そんな奈々の様子を察し正叔父さんが近付く。そして奈々の肩に手を置き

「大丈夫か。」

と優しく言った。更に隣に座り

「辛い事、大変な事は続くモノだ。それも呪いのように。でも実際は呪いなんてなくて全て偶然なんだよ。だから今回の事も全て偶然だ。気にする事は無い。」

と言う。だが正叔父さんの優しい言葉に奈々の心は晴れない。

「気遣ってくれてありがとうございます。でも私にはどうしても偶然とは思えなくて…。それに、もし手紙が事実だったら私が狐と結婚しないと桂川家が滅んでしまいます。そうしたら叔父さん達に迷惑をかけてしまいます。私が…、狐と結婚しなかったせいで…!」

奈々は正叔父さんを見つめながら叫ぶように言う。その瞳には涙がにじんでいた。奈々の只ならぬ様子に正叔父さんは優しく抱きしめる。そして奈々が泣き止むまで子供のようにあやすのだった。

 しばらく正叔父さんが優しくあやしてくれたおかげで奈々の涙はようやく止まる。だがその目は赤く腫れあがってしまった。その目を擦りながら奈々は

「でも…、このまま放置していたら本当に桂川家が滅んでしまう気がします。一体どうすれば…。」

と呟く。すると彰が部屋に入って来て

「心配いらねぇよ!」

と力強く言う。更に彰は

「確かに俺が開いているケーキ店も売り上げが落ちたさ。けど、まだ店を潰そうとは考えてないぜ?せっかく自分の夢を叶えたんだから、ギリギリまで踏ん張ってやるさ!」

と気合いのこもった言葉で言った。その言葉に正叔父さんも頷き

「あぁ、そうさ。皆自分の夢が叶ってるんだ。その夢を簡単に捨てるような事はしないよ。」

と明るく言った。2人の様子に奈々は笑顔になる。だが心の奥底では未だに手紙の言葉が引っ掛かっているのだった。

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