第13話

その週末。奈々は再び列車を乗り継ぎ祖父の家へと向かっていた。最近帰ったばかりの為か車掌から景色を見てもイマイチ懐かしく感じなかった。それよりも正叔父さんが呼び出した理由の方が気になっていた。

(叔父さんは何を焦っていたのだろう?もしかして、あの手紙に関する事かしら…?)

心の中で疑問に思いながら奈々は祖父の家へと急ぐのだった。

 何時間も列車に乗り継いだ奈々はようやく祖父の家がある土地へと辿り着く。そして田園風景が広がる田んぼ道をやや早歩きで祖父の家へと向かって行った。

 祖父の家に辿り着くと既に正叔父さんや彰をはじめ他の親戚達が集まっていた。だが、その表情は皆何故か暗かった。

(何かあったのかしら…?)

ふと奈々が疑問に思っていると、正叔父さんが皆に

「緊急会議をするので1つの部屋に集まるように。」

と言う。その言葉に皆は円状に集まり正座をした。

「皆、前当主・桂川一郎の葬式後すぐなのに集まってくれてありがとう。…早速だが、最近私の周りで発生している事で報告したいと思ってな。聞いてくれ。」

そう言うと正叔父さんは戸惑いながら話し始める。それは祖父の死後あの手紙が公開されてから会社の経営が途端に悪化したそうだ。確かに正叔父さんはいくつも工場を持つ会社を経営している。この不景気の中、負けずに建ち続けていてずっと安泰だと聞いていたのに…。

 奈々が驚いていると他の親戚達も口々に言い始めた。

「実は俺の店も急に赤字が出始めたんだ。」

「私の会社も持ち株が大暴落して…。」

次々と親戚達は急激に悪化した会社や店の状況を話し始める。すると正叔父さんは、そんな親戚達にある事を問いた。

「…それは前当主の桂川一郎が亡くなって手紙が公開されてからか?」

正叔父さんの問いに皆は一瞬言葉を失う。だが、しばらくの沈黙の後、皆は頷いた。その様子に正叔父さんは何かを納得したのか深くタメ息をつく。そして皆を再び見つめると

「…そうか。だが当主亡き今、どうしようしようもない事だから、各自頑張って踏ん張ってくれないか?頼む!」

と尋ねた。その言葉に皆はタメ息をつき頷く。こうして衝撃の真実が打ち上げられた親族会議は終了した。

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