第10話

奈々は終止考え込んでいたが、正叔父さんはその様子を気にしつつ更に手紙を読み進めた。

「その叔父との契約の効力ももうすぐ消える。その前に新たに契約をしなければならない。そこで私の孫・奈々に伝えたい事がある。お前は昔から私に似て妖と交われる程、強い力を持っている。よって代々、桂川と契約している決められた妖狐と結婚しろ。」

「・・・!?」

手紙の内容に驚く一同。

「狐と結婚だなんて…!俺は反対だ。そんな事、守る必要はない!」

彰は手紙の内容に強く反発する。すると正叔父さんは手紙の続きを読み始める。

「さもなくば妖狐との契約は途切れ、桂川家の全ての財産は失われる。そして最終的には桂川家は没落するだろう。もし救いたいという思いが少しでもあるならば早く決断する事だ。では皆の無事を祈っているぞ。桂川家当主・桂川一郎。」

正叔父さんは全てを読み上げると手紙を畳の上に静かに置いた。

 一方、手紙の内容を聞いた皆はあまりの内容に言葉を失っていた。すると彰が

「桂川家が没落するだって?そんな訳ないじゃないか。だって現に皆は普通に生活してるし!こんな手紙、馬鹿げてるさ。皆もそう思わないか?」

彰の言葉に張りつめていた空気が少し緩む。そして互いの顔を見合わせる。

「そうね…。今現在、何も起きてないんだから没落する訳ないわよね?」

「あぁ。きっと一郎さんは何か勘違いしてるんだよ。」

皆は手紙の内容を本気にせずただ笑い合っていた。だが、そんな中で奈々だけが手紙の内容に胸騒ぎを覚えていた。

 その後、親戚達は自宅に戻ってしまい、奈々はいつの間にか1人になっていた。部屋で祖父・一郎の遺影を見つめながら奈々はふと先程の手紙の事を考えていた。

(あんな手紙を残すだなんて…。やっぱり私の事を許せれなかったのかしら?それに皆は手紙の内容を本気にしてなかったけど、私は嘘とは思えない。)

奈々が考え込んでいると背後に誰かの気配を感じた。振り返るとそこには正叔父さんが居た。どうやら奈々の様子をずっと気にしていたようだ。正叔父さんは奈々の横に座ると

「…一郎さんはずっと奈々君の事を大切に思っていたよ。だから困らせるようなことはしない。手紙の事は気にするな。」

と優しく言った。その言葉に奈々の心の中はまだ少し不安が残っていたが

「…ありがとうございます。」

と心配させないようにお礼を言うのだった。

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