第9話

「皆さーん!一郎さんからお手紙が来たわよ!」

叔母さんは男性から預かった手紙を手に、皆が集まる和室へと入ってきた。叔母さんの言葉を聞いた皆は驚く。

「何を言ってるんだい!死者から手紙が来る訳ないだろ?」

一族を代表するかのように彰は呆れ顔で言った。

「違うわよ!一郎さんから直接受け取ったんじゃなくて、一郎さんの知り合いだっていう人から受け取ったのよ。」

「『知り合い』って…。一体、誰から受け取ったんだよ?」

彰の問いかけに叔母さんは困り顔になる。

「誰って言われても…。名前を聞きそびれちゃったのよ。すぐに居なくなってしまったし。…あっ、でも手紙自体は本物だと思うわ。表の宛名の字が一郎さんの筆跡だったから。」

叔母さんはそう言うと皆に手紙を見せた。確かに表の字は独特な形をしており、一郎の筆跡だという事が皆にも分かった。

「…まぁ誰から受け取ったにしても本物である事にほぼ間違いないみたいだしな。…読むだけ読んでみようか?」

正叔父さんはそう言うと叔母さんから手紙を取り声に出して読み始めた。

 「皆よ、元気にしているか?桂川一郎だ。突然の手紙で驚かせてしまい申し訳ない。本当なら直接伝えるべきなのだろうが、私に残されてる時間は思ったよりも少ないようだ。なので、今お前達に伝えたい大事な話は手紙として残す事にした。心して聞いてくれるとありがたい。」

その手紙には生前の祖父の気持ちが込められていた。奈々は赤くなった瞳で正叔父さんを見つめ、他の親戚達も真剣な表情で耳を傾けていた。

「実はお前達も知っているように桂川家の歴史はかなり古い。しかもただ古いだけでなく、桂川の血を引く者はどんな暮らしをしていても一定の富を得ている。こんな時代でどうして富を得る事が出来るかお前達には分かるか?実は桂川家はある高貴な力を持つ妖狐の一族と特殊な契約を結んでいるのだ。」

「ハァ!?妖狐と契約!?」

手紙の内容を聞いた彰は思わず声を上げる。だが正叔父さんは気にせず手紙を読み続けた。

「特殊契約の内容とはその一族の狐と結納を交わす事。結納を交わすとその相手の妖狐一族から褒美として富が貰えるのだ。私の叔父も密かに妖狐一族の者と結婚し富を得て桂川家を守ってきた。」

祖父の手紙の内容を聞き奈々は何となく納得する。確かに桂川家の者達は会社を経営したりして、ほぼ皆が富を得ていた。その裏でこんな事があったとは…。

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