第7話
ほとんど田畑と木々しかない田舎の風景。ここに奈々の祖父・桂川一郎の家がある。2階建ての大きな日本家屋は築100年近く経つのだが、元々の造りがしっかりしている為が今も朽ちることなく建ち続けている。
「相変わらず大きい家だなぁ…。」
奈々はそう呟きながらも、かつて暮らしていた懐かしい思い出に浸っていた。
そんな奈々がしばらく家を見つめていると誰かが近付いて来た。
「…あれ?奈々じゃないか?そんな所で何やってるんだ?」
「えっ…?もしかして…彰君?」
奈々に近付いて来たのは正叔父さんの息子で奈々のはとこの彰だった。
「そうだよ。久しぶりだな!君が高校を卒業して町へ出た以来かな。元気だったか?」
「まぁね。彰君も元気そうで良かったわ。」
2人は互いを見つめると今の仕事の事などをしばらく話し合っていた。
「こらっ、お前達!まだ家に入らないのか?皆が待ってるぞ!」
突然、話しかけられて驚く2人。そこには正叔父さんが居た。
「何だよ、親父!急に声かけられると驚くじゃないか!」
「2人が早く入ってこないからだろう!さぁ、入るんだ!奈々君も!」
こうして奈々は彰と共に、正叔父さんによって半ば強引に家の中に入れられるのだった。
家の中に入ると既に他の親戚達は集まり喪服姿になっていた。
「さぁ、奈々さんも向こうの部屋で着替えなさい。」
叔母さん達に言われ奈々は隣の部屋へと移動。そして鞄から喪服を取り出すと手早く着替えていった。着替え終わり髪も整え直すと奈々は再び最初の部屋へと戻る。すると皆が棺に近付き見つめていた。
「さぁ…。奈々君もお祖父さんの顔を見てあげなさい。」
正叔父さんの言葉に奈々は頷くと棺を覗き込む。
棺の中の祖父はまるで眠っているかのように穏やかな表情をしている。その顔を見た瞬間、奈々の目から涙が零れ落ちる。
「ゴメンね…。お祖父ちゃん。帰って来なくて本当にゴメンね…。」
奈々の口から自然と謝罪の言葉が出てくる。もう亡くなってしまった人にその言葉が届かないのは分かっているけれど…。涙と言葉は次々と溢れていき止める事は出来なかった。
やがて桂川家に代々お世話になっている寺の住職がやって来た。奈々は叔母さんに肩を抱かれ、用意されていた座布団の上に正座する。そして住職に頭を下げ挨拶をすると、涙を拭きながら共に別れの気持ちを込め経を唱えるのだった。
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