(第4話)

第10話

翌日の早朝。外から聞こえる小鳥の声にミカエルは目を覚ます。客室の窓から外を見ると辺りはうっすらと霧がかかっており人影も見えない。ミカエルは服を着替え客室の扉を開け見回す。広い廊下にはまだ誰の姿もなく不思議と静まりかえっていた。ミカエルは廊下に出ると静かに外へ出て行った。

 サフィロス城を出たミカエルは昨日の森に向かって歩き始める。森に近付くにつれ少しずつ霧も晴れてきて辺りは朝日に照らされていく。「さて、どうしたものか…。」森を目の前にミカエルはふと呟く。だが意を決すると草木をかき分け森の中に入って行った。

 朝露に濡れた草木をかき分けながらミカエルは森の中を突き進む。「この辺りのハズなんだが…。」そう呟きながら歩いていると複数の小鳥の声が聞こえた。気になったミカエルは声の聞こえる方へ進んで行く。するとミカエルの目の前に昨日見た切り株が現れた。更にその近くには手から小鳥に餌をあげているレイラが居た。その姿は朝日に照らされ独特の美しさを放つ。思わず見とれるミカエルに「そんな所に隠れていないで出て来たら?」とレイサは話しかける。どうやら既に気付かれていたようだ。ミカエルはレイラの言う通り草木から出るとレイラに近付いて行った。

 「おはよう。レイラ。君って早起きなんだね。」「そういうミカエルも随分早起きなのね。」餌を食べる小鳥を見つめながら2人はたわいもない会話をする。ミカエルの中では昨日思った事を聞きたかったが思うように言葉が出ない。そんなミカエルの気持ちを察したのか、レイラは手に付いた僅かな餌を払うと「一緒に座る?」と切り株を指差して言った。ミカエルが頷くとレイラは先に切り株に座る。そしてミカエルもレイラの隣に腰かけた。

 「昨日、サフィロス王国のドリス王女に会ったんだよね?やっぱり綺麗だったでしょう?」先に言葉を発したのはレイラだった。「まぁ、噂通り綺麗だったよ。」ミカエルが答えると「でしょう?彼女に会った人はすぐに『妻にしたい』って思うんだって。ミカエルも思った?」とレイラは無邪気に尋ねる。レイラの笑顔に思わず頬を赤くするミカエル。だが冷静さを装いながら、「好みは人それぞれだけどな。それに、どちらにしてもドリスとは結婚する予定だし。」と話した。ミカエルの言葉に一瞬レイラの胸が痛んだ気がしたが、悟られないように無邪気な表情を続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る