第9話

ドリスの城内案内が終わる頃には夜になり始めていた。心なしか廊下が薄暗く感じる。一度応接室に戻ったミカエルは再びドリスの案内で食堂に向かう。食堂の椅子に腰かけしばらく待っていると「失礼します。夕食をお持ちしました。」という声と共にデヴィットとメイドが食堂に入って来た。そして手際よく夕食の支度を始める。手際良く並べられる料理をミカエルが見つめていると「ワインはいかがかしら?」とジュビアは薦める。いつもなら喜んで酒を飲むミカエルだったが今日は気分がのらなかった。「いや止めておきます。何だか疲れてしまって…。」ミカエルの言葉にジュビアは残念そうな表情でワインボトル引かせた。一方、ジュビアのワインを断ったミカエルはデヴィットからミネラルウォーターを貰う。そしてグラスに注がれたミネラルウォーターを口にしながら食事を進めた。目の前ではジュビアとドリスが楽しそうに会話しながら食事をしている。そんな2人を見つめながらミカエルは静かに食事をするのだった。

夕食後、デヴィットに用意して貰った客室にミカエルは1人で過ごしていた。本来なら婚約者であるドリスと寝室を共にするべきだろう。だがミカエルは昼間会ったレイラの事が頭から離れられなかった。そんな精神ではドリスとベッドを共にする気も起きない。結局「疲れたので1人で休ませて下さい。」と言い用意させた客室で休むのだった。「レイラは今も森の中で1人で過ごしているんだろうか?」ベッドの中でミカエルはずっと考え込んでいた。どういうきっかけで森の中に住み始めたのだろうか?本当に家族は居ないのだろうか?ミカエルの頭に様々な疑問が次々と浮かぶ。そして、その疑問を解決する為にも再びレイラに会おうと思い始める。改めて決意したミカエルは眠りにつくのだった。

ミカエルが眠りについたその頃。薄暗い森の中にレイラは1人で過ごしていた。大きな切り株に座りながら、昼間のミカエルとのやり取りを思い出していた。「ミカエルとの結婚が国を救う為の最終手段…。」レイラは呟きながら満天の星空を見上げた。(この国の存在はそこまで危ぶまれているのね…。)今も昔も変わらない星空を見上げながらレイサはそんな事を考えていた。そしてタメ息をつくと、森の中にひっそりと佇む小さな小屋へと戻って行った―。

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