第8話

王女達が来るのを待っていたミカエルは立ち上がり窓から外を眺めた。遠くにはレイラと出会い共に通り抜けた森が見える。(レイラ…。不思議な女性だった。とても美しくて本当に姫君のようだった。彼女は一体何者なんだ?)これから王女と結婚し国を救わなければならないのにミカエルの頭の中はレイラの事でいっぱいになっていた。

 しばらく外を眺めていると城の入り口付近で2人の女性の声が聞こえた。どうやら噂の王女達が帰って来たらしい。話し声は段々と近付いて来て応接室の前まで来た。「失礼します。」声と共に扉が開けられ一人の女性が入って来た。「初めまして。王妃のジュビア・サフィロスよ。よろしくね。」ジュビアが自己紹介すると、ミカエルは近付きジュビアの頬に挨拶の口付けをした。そしてジュビアの後ろから若い女性が現れると、「この子が娘で王女のドリスよ。」とジュビアは紹介した。「初めまして。ドリス・サフィロスです。ミカエル様に会えて嬉しく思いますわ。」「こちらこそ会えて嬉しいよ。」微笑みながら挨拶するドリスにミカエルも軽く挨拶をする。そして3人でソファーに腰掛けた。「本当にミカエル様が来てくれて嬉しいわ。これでドリスも安心して暮らせるわね。」「もうっ!お母様ってば!」ジュビアの言葉にドリスは頬を赤らめる。そんな盛り上がる親子のやり取りをミカエルはただ見つめていた。ミカエルの様子を見ていたジュビアは「そうだわ。せっかく城に来たのだからドリスに案内して貰ったら?いかがかしら?」とミカエルに提案する。(いつまでも親子の会話を聞かされるよりは…。)そう考えたミカエルはドリスと一緒に城の中を廻る事にした。

 城の中は高そうな絵やアンティーク調の品々が複数も飾られている。それらはミカエルの目にも分かるほど高級品ばかりだ。『衰退しそうなんじゃ?』考え込みながら品々を見つめるミカエルに「どうかしましたか?」とドリスは覗き込み尋ねる。「いや…。綺麗な物が多くて驚いたんだ。これは君の趣味かい?」「ありがとうございます。でも、この品々は母の趣味ですわ。国王はこういうのが好きじゃなくて、行方不明になってから母が集め始めましたの。」ミカエルの質問に明るく答えていたドリスだったが、次の瞬間、真顔でミカエルを見つめる。「どうかこの国を救って下さい!」ドリスの言葉にミカエルはただ頷く事しか出来なかった。

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