(第3話)

第7話

城をめざし歩き続けるミカエル。螺旋状になった坂を上りきると目の前に大きな城が現れた。「ここが…、サフィロス城?」それは水色の屋根に頑丈そうな石造りの壁をした立派な城だった。だが、壁にはツタが生えめぐらされ雰囲気がとても古ひている。

 ミカエルが思わず硬直したまま見つめていると、城の扉が『ギギー…』と音を立てながら開いていく。そして中から一人の金髪の男性が現れた。「どちら様でしょうか?」真顔で問いかける男性にミカエルは「えっと…、ミカエル・カーチェストです。父から…、トムズ・カーチェストから話を聞いてないでしょうか?」と戸惑いながら話す。男性はまじまじとミカエルを見つめると「どうぞ。お入り下さい。」と言って城内へ招き入れた。

「私は執事のデヴィット・マグリオです。先程は失礼しました。何分、最近は国の情勢が悪い為か『不審な者がうろついている』という情報がありまして…。」少し薄暗い廊下を歩きながら男性は話す。(不審な者ってレイラの事だろうか?)ミカエルはそう思いながらも「いや…。こっちこそすぐに名乗らなかったから…。」と言い特に追及をしようとはしなかった。そんなミカエルの表情を見ながらも男性は話を続ける。「トムズ様から話は聞いております。よくサフィロス王国に来て下さいました。どうぞ、こちらへ。」男性はミカエルを一室に連れて行った。

 そこには1つのテーブルに大きなソファーが2つ向い合せに置かれ、近くの棚には西洋の陶磁器が並べられている。おそらくここが応接室として使われている部屋なのだろう。デヴィットはミカエルをソファーに座るよう促す。そしてミカエルがソファーに腰かけるとメイドと思われるピアスをした若い女性が入って来てカップに紅茶を注ぐ。森の中を彷徨い喉が渇いていたミカエルは一気に紅茶を口に流し込んだ。「お口に合ったみたいで嬉しいです。もう1杯いかがですが?」ミカエルが頷くとメイドは更に紅茶をカップに注いでくれた。

 紅茶のおかげで喉が潤い落ち着くミカエル。その様子を見ながらデヴィットは「申し訳ございません。王妃と王女は只今外出しておりまして。しばらく待っていただかないと…。」と申し訳なさそうに話す。「良いよ。この部屋で待っておくから。」ミカエルが答えるとデヴィットは深々とお辞儀をしメイドと共に部屋を出て行く。ミカエルは2人を見送り部屋で王女達が来るのを待つのだった。

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