第4話

あの出来事から数日が経過した現在。ミカエルはサフィロス王国を目指して歩いていた。本来は自家用飛行機を降りた後に車で行く予定だった。だが『豊かな自然を残そう』という名目で道はあまり整備されておらず、車を諦め歩いて城を目指すハメになった。

城を目指し歩くミカエルの目の前に広大な森が現れた。「近道かもしれない。」そう思い森の中に入っていく。森の中は様々な色の花々と植物が生えており穏やかな時が流れている。美しい自然に見とれながらもミカエルは歩き続けた。

どれぐらい時間が過ぎただろうか。相変わらずミカエルの目の前には森の風景が広がっていた。「道に迷ってしまったか?」そう思い森の入口に戻ろうとする。だが、戻ろうとすればするほど更に森をさ迷うのだった。「近くに誰か居てくれると良いのだが…。」フラつきながらも歩いていると、木々の隙間から強く光が漏れていた。早速、草木をかき分けながら光を目指し歩くと、何やら拓けた場所に出た。その拓けた場所の中央には大きな切り株がある。

「ここは一体?」そう思いながらミカエルは大きな切り株に近付く。と、よく見ると切り株の上に何かが横たわっていた。「あれは…人なのか?」ミカエルは横たわっているモノに近付きまじまじと見つめる。白い肌をした華奢な体、クリーム色に緩いウェーブがかった長い髪、淡い紅色をした唇。まるでずっと森の中にいた妖精のように美しい女性だった。

そんな美女に思わず見とれるミカエルたったが、ふと疑問に思った。「そもそも生きているのか?」恐る恐る女性の腕に触れた。ガラス細工のように滑々した腕はしっかりと熱を帯びており脈も打っている。「良かった。生きてる…。」ミカエルが呟くと女性は静かに目を開ける。そして上半身を起こすと背伸びと大きなあくびをし、エメラルド色の瞳でミカエルを見つめた。「貴方は誰…?」女性はミカエルにそう尋ねたのだった―。

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